『スタンフォード大学・オンラインハイスクール校長が教える 脳が一生忘れないインプット術』
書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます
【毎日書評】やる気を高める3つの要素でインプットの質はあげられる!
[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)
「インプット法」に関するメソッドは数あれど、現実的には再現性の低いものも多く、もっといえば科学的根拠のないものばかり。『スタンフォード大学・オンラインハイスクール校長が教える 脳が一生忘れないインプット術』(星 友啓 著、あさ出版)の著者はそう指摘しています。
そこで本書においては、「科学的に効果が確認されているインプット法」を伝えることを目的としているそう。最新の脳科学と心理学に裏打ちされた方法のなかで、とくに効果が高く、すぐにでも実践できるものを厳選して解説しているというわけです。
ちなみに著者は、スタンフォード大学にある中高一貫校「スタンフォード大学・オンラインハイスクール」で校長を務める人物。はたして同校には、どのような特徴があるのでしょうか?
テクノロジーと世界の教育のフロンティアでチャレンジを続け、近年、オンラインの学校でありながら、全米トップの進学校として認知されるようになりました。
そういった仕事柄、子どもから大人まで、勉強法の研究と実践が毎日の日課になっています。世界屈指のスタンフォード大学という「地の利」を生かして、最新の学術論文を網羅しながら、特に効果が高くシンプルなインプットの方法を、学校や職場などの学びの場に発信しています。(「はじめに」より)
とくに近年は、先端の脳科学や心理学により、「人間の学びのメカニズム」が科学的に紐解かれてきているそう。また、そのような流れのなかで、「学びの科学」(science of learning)と呼ばれる研究分野が広く認知されつつあるのだといいます。
つまり本書は、スタンフォード大学だからこそなし得た数々の研究結果に基づいて書かれたものだということになるのです。きょうは第5章「インプットの質を上げるモチベーション管理」のなかから、いくつかのトピックスを抜き出してみたいと思います。
やる気次第でインプットの質は変わるのか?
業績を上げたり、大きな目標を達成したいというような思いを実現するためには、相応の時間と実践力が必要になります。短期間のやる気と努力だけで、どうにかなるものではないということ。
だからこそ、うまくいかない場合には「やる気が出ても長続きしない」「達成したい目標に向かって最後までがんばりきれない」と悩んでしまうことになるのでしょう。
しかも、やる気は気持ちの問題であり、自分でコントロールすることは難しくもあります。だから難しいわけですが、著者によれば、やる気は科学的にコントロールすることが可能なのだそう。
なお、やる気がどのように湧き出てくるかを理解するためには、「自己決定理論」という心理学理論が役に立つようです。
その中心的な内容は以下のとおり。
人間のモチベーションのベースは、人とのつながり(関係性)、自分が何かできるという感覚(有能感)、それから、自分が決断したことを自分の意思に沿ってやっているという感覚(自律性)である。
これら「心の三代欲求」が満たされると、私たちの心が満たされる。
また、そのように心が満たされるような事柄に対して、私たちは動機づけられる。(151ページより)
このことに関連し、著者は「報酬系」について触れています。ご存知のとおり報酬系は、私たちが「幸せだなあ」「気持ちいいなあ」などと感じる際に活性化される、心に「報酬」を与える脳のメカニズム。
報酬系が活性化されると、幸福感や満足感につながるドーパミンが脳内で分泌されます。
そして、私たちが「つながり」「できる感」「自分から感」という心の三大欲求を感じるときには、まさにこの報酬系が活性化していることがわかっているのだといいます。つまりモチベーションを効率的に引き出し、維持するためには、これら3つが得られるような環境をつくればいいわけです。(148ページより)
ビジネス目標の基本形
ところで、どのようなプロジェクトをするときにも、目標設定は欠かせません。
きちんと目標を設定することでパフォーマンスが上がり、より大きな成果を達成することができるのですから。また、それがインプットのクオリティを上げることにもつながるでしょう。
そこで著者は、ビジネスや勉強の場面で幅広く使われている「SMART目標」について解説しています。なお「SMART」とは、目標設定に必要な5つの要素の頭文字をとって並べたもの。
・Specific(具体的に)
・Measurable(測定可能な)
・Achievable(達成可能な)
・Related(関連した)
・Time-bound(時間制約がある)
(161ページより)
たとえば「よい成績を挙げる」という目標は、抽象的で成果が曖昧。そのため、予定や目標に至るまでの自分の役割や道のりを描きにくいわけです。
その一方、「来月の自分の営業の売り上げを今月から10%アップさせる」という目標であるなら、「毎週3%アップさせる」というように具体的な道筋を描くことができます。
ここからもわかるように、漠然とした目標よりも、“具体的で、かつ、達成したかどうかがはっきりわかる”「Specific(具体的)」な目標や、到達具合を数値化できる「Measurable(測定可能)」な目標が重要な意味を持つのです。
また、「来月の」というように、「Time-bound(時間制約がある)」という要素も大切。達成までの時間を意識することができれば、いつまでも未達成の状態を避けることも可能になっていくからです。
加えて、「10%アップ」というような目標が、あまりに非現実的だった場合にも注意が必要。ある程度レベルが高かったとしても、「Achievable(達成可能)」な目標を立てる必要があるということです。
そして、売り上げを上げることが会社や自分にとって有意義なものでなくてはいけません。つまり文脈に合わない目標ではなく、「Related(関連した)」目標を心がけなくてはいけないのです。
このように「SMART目標」の5つの要素をつねに意識し、基本となる目標を立てる。それこそが、効果的な目標達成のための第一歩だということです。(160ページより)
高いモチベーションを維持し、信頼できる情報を、効果的なインプット法で学習できるようになること。
それが本書のテーマだそうです。つまり、しっかりとしたエビデンスに基づく効果的なインプット法を習得することができるということ。さまざまな領域においてのインプット力を高めるために、参考にしてみてはいかがでしょうか?
Source: あさ出版