よい習慣を身につけるには「脳のGPS」機能が高めるのがポイントだった

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習慣は3週間だけ続けなさい

『習慣は3週間だけ続けなさい』

著者
名郷根 修 [著]
出版社
SBクリエイティブ
ジャンル
社会科学/経営
ISBN
9784815625733
発売日
2024/06/02
価格
1,760円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

【毎日書評】よい習慣を身につけるには「脳のGPS」機能が高めるのがポイントだった

[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)

よい習慣を身につけたくて何度もチャレンジするものの、なかなか続かないという方は少なくないはず。『習慣は3週間だけ続けなさい』(名郷根 修 著、SBクリエイティブ)はそんな、「なにをやっても長続きしない」と悩む方に向けて書かれたものだそうです。

著者は、のべ1万人に「認知科学に基づくコーチング」をしてきたというエグゼクティブコーチ。ちなみにコーチングについては、「人に目標達成をしてもらうために、行動を起こしてもらうのが仕事」だと記しています。そうしたバックグラウンドをベースとして、本書では「認知科学」と「コーチング理論」の観点から、脳の仕組みに基づく「習慣化メソッド」を明らかにしているのです。

特徴的なのはその考え方。習慣が続くようになるためには、その習慣を定着させることが必要ですが、定着さえしてしまえば、あとは勝手に動くものだというのです。

なぜなら定着とは「続けないと気持ちが悪い状態」「続けないではいられない状態」にすることだからです。(中略)

脳の特性を考えて、まずはあえてゴールを「3週間後」に置いて「定着」を優先することで、その後も習慣が一生続くようにするメソッドなのです。(「はじめに」より)

となると、「なぜ3週間なのか」が気になりますが、そこには脳の「GPS機能」が影響しているようです。自動車を運転する際、カーナビに目的地を入力すればGPSが勝手に導いてくれますが、脳にも同じ機能があって、目標まで突き動かしてくれるというのです。そうした脳の「GPS機能」が定着する期間が「3週間」だということ。

基本的な考え方を確認するために、PROLOGUE「なぜ習慣は3週間だけ続ければいいのか?――21日間を目指すと、習慣は一生続く」のなかから「脳の『GPS機能』が働く原理」に注目してみましょう。

原理1 「絶対こうなりたい!」――「外発的動機」が脳のラス機能を働かせる

習慣化を身につけたいとすれば、そこにはなにかしらの理想があるはずです。たとえば、「あの人みたいになりたい」という漠然とした将来像とか。著者によればこれが「外発的動機」と呼ばれるもので、この動機を持つことが、無理なく「GPS機能」を自然に働かせる第一歩となるのだそうです。

たとえば上司が部下になんらかの仕事を手伝ってほしいときなどに、「ノルマを達成したら、ボーナスが10万円多く出ます」という「報酬」を提示したとすれば、すなわちそれが外発的動機だということです。

ただし、「行為そのものが楽しい状態(内発的動機)」で取り組めればベストですが、あまり楽しくないから苦しくなるのも事実。では、どうすればいいのでしょう?

気が向かない行動を習慣化するためには、まずなりたい姿、ありたい姿を外発的動機で明確にして「GPS機能」を働かせることが効果的です。

この際に可能な限り目標は明確にすべきです。

なぜならば、目標を明確に描くことで脳の「GPS機能」(ラス)がそれを重要な情報として認識しやすくなるからです。

ラスは重要な情報に焦点を当てる働きを担っています。

目標が視覚化されれば、脳はそれを重要な情報として認識し、集中しやすくなります。ラスが優先的に処理するきっかけとなるのです。(47ページより)

脳にとって、目標を達成することで得られる報酬や充足感は強力な動機づけになるもの。そして外発的動機には目標達成によって得られる報酬やポジティブな刺激が関連づいているため、ラスは反応することになります。たとえば「ノルマを達成したらボーナスがもらえる」という目標があればそれが刺激になり、習慣化に向けた行動が促されるわけです。(42ページより)

原理2 「実現できる気しかしない!」――「自己効力感」が脳のラス機能を強化する

「自己効力感」はカナダの心理学者アルバート・バンデューラによって提唱された概念です。

これは「人が行動や成果を求められる状況において、自分は必要な行動をとって、結果を出せると考えられる力」のことです。

簡単にいいますと、「自分ならばできる」と考えられる状態です。

ですから、「自分は達成できる」「自分には能力がある」という確信があれば「自己効力感が高い」といえます。

一方で、「自分位は無理だ」「自分には能力がない」と思ってしまえば、「自己効力感が低い」といえます。(49〜50ページより)

では、なぜ習慣化に自己効力感が必要なのでしょうか。また、自己効力感が高いと、なぜ脳の「GPS機能」(ラス)が働くのでしょうか? その答えは、自己効力感が特定の課題や目標に対する信念であることに関係しているようです。そして、「私はできる」「できないはずがない」という信念が強ければ、目標を明確に視覚化できるそう。

たとえば、起業時に「絶対に5年後に年商1億円にする」と自信があればあるほど5年後の自分の姿、事業内容や年収、ライフスタイルなどが鮮やかにイメージできるはずです。

そして、イメージできればできるほど脳のラスはそれを重要な情報と思い込み、目標達成に必要な情報に焦点を当てます。(47ページより)

そのため結果的に行動を起こしやすくなり、それが習慣化につながるというわけです。(49ページより)

原理3 「それそのものが楽しい!」――「内発的動機」が脳のラス機能を定着させる

最後の「内発的動機」は、文字どおり人の内側から湧き上がる動機。内的で本質的な欲求によって引き起こされるもので、「個人の行動を後押しする内面から湧き上がるモチベーション」と考えるといいそうです。

お金や名声、出世、評判などではなく、物事に対する興味や関心、そこから生まれるやりがいや達成感、楽しさなどがあてはまるようです。端的にいえば、人にどう思われるかは関係なく、損得でもない。自分が好きだから没頭する、行為そのものが楽しいから取り組むということ。

内発的動機は脳の「GPS機能」を定着させます。それには感情が大きな役割を担っています。

内発的動機は内面から湧き上がるモチベーションですから、個人の情熱や好奇心に深く根ざしています。

楽しさや嬉しさや喜びなどですね。

この情熱や興味が脳によって認識され、ラスを通じて注意を引くと、感情の中枢が活性化されます。

その行為をすると楽しい、嬉しいなどのように感情と結びつくわけです。(61ページより)

そして感情の結びつきが強いほど、脳はその情報を重要視し、ラスはその情報を長期記憶として定着させる傾向があるということです。(60ページより)

なにかひとつ、よい習慣が身につくと、その他の多くのことの習慣化にも派生する――。本書を通じて著者が訴えているのはこの点です。逆にいえばこれまで習慣化できなかったのは自分の能力のせいではなく、取り組みの方法が適切でなかったからにすぎないということ。そこで本書を参考にしながら、習慣化の定着を目指したいところです。

Source: SBクリエイティブ

メディアジーン lifehacker
2024年7月18日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

メディアジーン

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