『新版 宇宙に命はあるのか』
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宇宙への熱い 想いの伝道者
[レビュアー] 佐藤健太郎(サイエンスライター)
商売柄、これまで多くの科学書を読んできた。痛感するのは、海外の科学書の圧倒的なレベルの高さだ。書き手の知識の該博さ、読者を引き込む巧みな比喩表現など、国産の書籍で太刀打ちできるものはなかなかない。残念ながら筆者自身も、力不足を認める他ない。
しかし日本人による科学書にも、素晴らしいものはもちろんある。小野雅裕『新版 宇宙に命はあるのか 生命の起源と未来を求める旅』はその一つに挙げていいだろう。2018年に刊行されて好評を博した旧版に、その後の経過などが盛り込まれたものだ。
本書冒頭に登場するのはジュール・ベルヌ。『地球から月へ』『海底二万マイル』などで知られ、SFの父と称される小説家だ。彼の与えたイマジネーションが少年たちの宇宙への憧れをかき立て、その中からゴダードやフォン・ブラウンなどのロケット技術者が現れた。イマジネーションは時代も国も超えて伝染し、人々を宇宙へと駆り立てる力となった。本書の著者も、宇宙への想いにどっぷりと感染した一人だ。
太陽系各惑星の様子、宇宙人はいるのか、そして人類は究極的にどこへたどり着くのか。現役研究者ならではの見識と、思い入れたっぷりの描写で綴られる文章は圧巻であり、科学書のお手本とすべきものだろう。
本書から著者のイマジネーションを受け継ぎ、次代の研究者となる者がきっと現れるはずだ。彼らはこの広い宇宙の、どこまでを見ることになるだろうか。