『パーティーが終わって、中年が始まる』
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『パーティーが終わって、中年が始まる』pha著
[レビュアー] 宮内悠介(作家)
『持たない幸福論』や『がんばらない練習』といった、独特な視点や生きかたを提唱してきた「日本一有名なニート」ことpha氏。その彼もいよいよ中年期を迎え、創造性が落ち、若さで突っ走ることができなくなってしまったそうだ。するとおのずと考えも変わってくる。本書はその一部始終――著者自身に起きた変化や、新たに生まれた考えなどを、一種異様なまでの率直さをもって記した本だ。たとえば、序文のこんな箇所。
「最近は本を読んでも音楽を聴いても旅行に行ってもそんなに楽しくなくなってしまった」「今まではずっと、とにかく楽しいことをガンガンやって面白おかしく生きていけばいい、と思ってやってきたけれど、そんな生き方に限界を感じつつある」
かつて提唱した考えに固執したりせず、変化は変化として淡々と受け止めるあたりが、いかにもこの著者らしい。通して読んでみると、みずからの喪失の過程を、どこか他人事のように、かつ不思議な情感とともに描き出しているようにも見える。なんとも言えない手触りのある一冊だ。(幻冬舎、1540円)