『会社から逃げる勇気 - デンソーと農園経営から得た教訓 -』
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【毎日書評】会社から逃げてよかった!好きなことを仕事にするための5つの考え方
[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)
『会社から逃げる勇気 デンソーと農園経営から得た教訓』(畔柳茂樹 著、ワニブックス)の著者は「農業起業家」。自動車部品メーカーのデンソーでキャリアを積むもハードワークの日々に疲弊して、長年の夢だった農業への転身を決意。2007年に45歳で独立し、『ブルーベリーファームおかざき』を開設したという経歴の持ち主です。
思い切って会社を飛び出し、大好きな農業で起業したことによって私の人生は劇的に、そして一気に好転した。
現在は、サラリーマン時代からは想像できないほど充実した生活ができるようになった。
今、振り返ってみると人生のどん底だったサラリーマンの管理職時代から、這い上がってここまで登ってこられた最大のターニングポイントは何だったのか。間違いなくコレだと言える。それは、会社から「逃げる」決断ができたこと。(「はじめに」より)
「逃げる」ということばにはネガティブなイメージがあるかもしれませんが、そこには「危険」から逃れて自分自身を守るという大事な目的があると著者は記しています。そう考えれば「逃げる」のは決して恥ずかしいことではなく、むしろ勇気ある決断なのだと。
つまり、そうした自身の経験を軸に本書は書かれているわけです。
ワークライフバランスや働き方改革が叫ばれる昨今、私の様に組織の中で立ち位置を見失った中高年サラリーマンはもちろん、自分を変えたい、何か新しいことを始めたいと考えている方々に、これからの生き方、働き方を変えるきっかけとなることを願って本書を執筆することにした。(「はじめに」より)
きょうは第9章「好きを仕事にする8か条」のなかから、5つのポイントを抜き出してみたいと思います。
好きなことをできる環境をつくり習慣にする
好きなことが見つかったとしても、なにもしないのであれば意味はありません。
好きなことに全力で取り組める環境をつくるためにもっとも効果的なのは、著者のように会社を辞めること。しかし、それは現実的に簡単なことではないでしょう。では、どうすればいい?
まずは1日5分からでもいいので、毎日好きなことを続け、起業の準備をする習慣をつくることが大切だ。
好きなことなので5分では終わらないはずだ。できれば毎日1〜2時間は続けたい。平日がどうしても難しければ、土日にまとまった時間を費やすことでもいい。とにかく習慣にしてしまうことが肝心だ。(238ページより)
半信半疑で始めたとしても、続けてさえいれば、その習慣はやがて自身の人格になっていくわけです。(238ページより)
できない理由探しをやめる
好きなことで起業する準備をしている過程では、「やっぱりできない」「どうせ無理」「やってもムダだ」というような恐怖観念に襲われがち。諦める理由は無数に思いつくものでもありますが、そんな思考回路を停止させる必要があると著者は主張しています。
できない理由探しではなく、「どうしたらできるか」という発想に転換しなければならないということです。
まずは自分が怖がっていることを自覚することが大事。挑戦しようとしているから不安で怖いのだから、まず「挑戦しようとしている自分を褒めてやろう。(中略)次に、なるべく達成することが容易な小さなステップをいくつかつくり、少しずつでいいから前に進めていくことで自信がついてくる。(241ページより)
自分をほめ、前を向くことが大切なのでしょう。(240ページより)
自分の内なる声、直感を大切にしてすぐ行動する
自分の中で、何か感じるものがあったら、即行動に移したい。
なぜ即行動かというと、考えれば考えるほど、過去の苦い経験がよみがえってブレーキがかかり、怖くなって動けなくなるからだ。
何も大胆な行動を起こしなさいと言っているわけではないし、そんな必要もない。
ちょっと調べてみる、体験してみる、参加してみる、問い合わせてみる程度のことで構わないので、まずは小さな一歩を踏み出してアクションしてみることをおすすめする。(243ページより)
早とちりをして失敗することもあるでしょうが、ほとんどの場合は、機を逃さずすぐに動くことでチャンスをつかみ、道が開けるものだといいます。(242ページより)
決断するとは、なにかを捨てること
何かを決断するということは、同時に何かを捨てるということ。決めて断つという漢字のごとく、決断の本質は「捨てる」ことにある。
「あなたの目的に沿わないもの」すべてを断ち切ること、これこそが、「決断」の本質ではないだろうか。(247ページより)
捨てることには不安が伴うものですし、著者もかつて決断した際には前向きな気持ちだけではなく、一抹の寂しさを覚えたそう。しかし、それがエネルギーとなり、決断したことからくる勢いにつながったそうです。(247ページより)
覚悟したらすべてが動き出す
最後は、腹をくくって覚悟できるかどうかにかかっている。(中略)苦悩することは、大切なことだが、そこから抜け出さないと前に進む推進力は生まれてこない。(中略)
覚悟して踏み出した場合と覚悟できずに踏みとどまった場合、それぞれの場合の10年後の自分がどう思い、どう振り返るか想像してみてほしい。きっと踏みとどまった場合は後悔し、踏み出した場合は納得しているに違いない。(248〜249ページより)
人は、迷っているときがいちばんつらいもの。しかし決めてしまえば、意外と楽に進んでいくものだということです。(248ページより)
組織に属している人にとって、独立や起業はハードルの高いものでもあるでしょう。しかし、なんとか働き方を変えたいと思っているなら、本書を参考にしてみてはいかがでしょうか。
Source: ワニブックス