ディズニーに学ぶ「どんな人でも活躍できる」人材育成の5ステップ

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どんな人も活躍できる ディズニーのしくみ大全

『どんな人も活躍できる ディズニーのしくみ大全』

著者
大住 力 [著]
出版社
あさ出版
ジャンル
社会科学/経営
ISBN
9784866676814
発売日
2024/06/11
価格
1,694円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

【毎日書評】ディズニーに学ぶ「どんな人でも活躍できる」人材育成の5ステップ

[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)

どんな人も活躍できる ディズニーのしくみ大全』(大住 力 著、あさ出版)の著者は、20年以上にわたってディズニーで多くの経験を積んできたという人物。ディズニーランド単体(点の時代)から、テナント店舗を含むリゾート全体(面の時代)のキャスト教育に携わってきたのだそうです。

そして以後は東京2020オリンピックの人材育成統括をはじめ、サービス業界、金融、製造、ITなど多彩な業界の企業に向けたコンサルティング、組織変革、人材開発、チームビルディングなどを通じ、多くの経営者やリーダー、さらには実践現場と接してきたのだといいます。

この経験から実感しているのは、成長し続けている企業には、ある共通点が存在するということです。それは、組織自体に強い意志があるとともに、蓄積されたノウハウを体系的に整理し、人材教育につなげていることです。(「はじめに」より)

社員ひとりひとりの能力を正確に把握し、個々の強みを活かしつつ、組織全体としても高いパフォーマンスを実現するための教育体系を築いていく――。そうした積み重ねが、変化に強く、長期的に発展するカギになっているということです。

そして、その際たる例が、著者が長年働いてきたディズニーです。ディズニーでは従業員個々のモチベーションに頼らず、全員が一定の成果を出せる仕組みを整えているというのです。なぜなら、「仕事はやる気や動機づけによって行うものではない」と考えているから。

そこで本書において著者は、ディズニーが人材育成において大切にしている価値観を軸として、全社員を活躍させるための仕組みを紹介しているわけです。

きょうはそのなかから、個人のミッションを達成するための仕組みを明らかにした第3章「1人ひとりが動くしくみを作る」内の「5つのステップで定着させる」に焦点を当ててみたいと思います。

ミスなく仕事ができるようにさせたい

現代の人手不足の職場における課題は、新しいメンバーを早く現場に適応させ、生産性を維持すること。

著者によればそのような状況下では、マニュアルが重要な役割を果たすのだそうです。なぜならマニュアルがあるだけで、誰が担当したとしても、仕事の質を一定に保つことができるから。

そこでここでは、「職場のマニュアルをもとに、メンバーがミスをすることなく仕事(とくに量的仕事)ができるようにしていく方法」が紹介されているのです。(72ページより)

ステップ1 「一連の行動」を教える

まず重要なのは、業務の全体像と仕事の手順(流れ)を理解させること。この段階では、実際に行う一連の行動の流れをメンバーに教えるわけですが、ひとつひとつの細かい意味を理解してもらう必要はないようです。

例:「クレーム対応では、まずは『場』を変え、『感情』を変え、『行動』を変えていきます」(73ページより)

マニュアルをもとに、「自分がやらなくてはいけない行動」が大まかに理解できる程度で問題ないということです。(72ページより)

ステップ2 仕事の目的をひとつひとつ教える

次は、マニュアルに記載されている行動の意味・理由(なぜそれを、その順序でするのかなど)を説明する段階。

行動そのものを覚えてもらうだけでは、時間の経過とともに順番が変わっていってしまうことがあるため、最終的に求める結果につながらない場合も。しかし業務の目的を理解すると、担当業務が会社のミッションにつながっていることも理解できるわけです。

たとえばディズニーのクレーム対応では、問題を収束させるだけではなく、「さらなるファンをつくること」が裏の目的だそう。したがって、「ファンをつくる」という目的を伝えれば、クレーム対応の仕事をポジティブな結果につなげるよう意識できるようになるわけです。

例:「クレームは、苦情や謝罪、金銭を求めるものなどさまざまですが、客観的にとらえると、自社の改善や成長・発展につながるものです。まずはお礼を伝え、ゲストに感謝の気持ちを持って向き合うことが重要です。論破し、損害を減らすことが目的ではありません。コミュニケーションを重ね、双方の基本的な姿勢の理解と協力が必要になります」(73ページより)

大切なのは、行動を定義し、作業ひとつひとつの意味をていねいに説明すること。(72ページより)

ステップ3 エピソードをひとつひとつ伝える

次はステップ2の「目的」につながる、「これまでに実際に経験したエピソード」を伝える段階。

例:「以前にこんなことがありました。それは…」(73ページより)

失敗事例ではなく、成功事例を詳細に話すのです。大切なのは、その行動ひとつひとつの意図が理解できる“臨場感のあるエピソード”を用意することだといいます。(74ページより)

ステップ4 「一連の行動」を反復させる

以後は、ステップ1でご紹介した「一連の行動」が完璧にできるようになるまで、ひとつひとつをひたすら反復実践練習させる段階。

どんなに難しいことも、しっかりとしたマニュアルのもとで繰り返していけば必ずできるようになるからです。(76ページより)

ステップ5 チェックリストで振り返る

最後にすべきは、チェックリストを使って一連の行動や対応の成果を確認し、次につなげるためのアクションを見つけること。

大切なのは、「内容(やるべきこと)×順番」です。穴埋め式のチェックリストで、それぞれの重要なポイント(言葉・回数・場所など)をチェックし、考えずにできるようになるまで確認していくといいでしょう。(76ページより)

そうすることにより、漏れに気づけるはず。そしてそれをふたたび業務に落とし込めば、確実にこなせるようになるわけです。(76ページより)

これからの時代は、業種や業態、企業名や規模ではなく、働きがいや生きがいを見出せる仕事の“場”がもっとも重要になるだろうと著者は予測しています。だからこそ本書を通じ、働きがいのある環境づくりの実現を目指すべきなのでしょう。

Source: あさ出版

メディアジーン lifehacker
2024年7月29日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

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