『何をやっても中途半端・・・な「器用貧乏さん」から脱出する本』
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【毎日書評】実はすごい「器用貧乏」という才能。能力を開花させる、自分軸の見つけ方
[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)
『何をやっても中途半端…な 「器用貧乏さん」から脱出する本』(龍夏 著、総合法令出版)の著者は、器用貧乏なひとのことを「器用貧乏さん」と呼んでいます。
それはともかく、そういうタイプの人には、他人からは「なんでもできる人」だと思われているのに、自分に自信がなかったり、自分のことは後回しにして、つい頼まれごとを優先したりする人が多いそう。しかも、そんなことを繰り返しているうちに、ストレスや不満を抱え込んでしまうことが多いというのです。
しかしその一方、器用貧乏さんには次のようなよい面もたくさんあるのだといいます。
・どんなことにも飲み込みが早く、平均点以上の結果や成果を出せる「マルチプレイヤー」として仕事がこなせること
・さまざまな経験から培われた柔軟な対応力があり、トラブルにも臨機応変に対応できること
・相手の気持ちを機敏に察知でき、周囲への気配りができるので率先してフォローできること
・広く浅く、人より経験をしているので周囲から頼られることも多く、話題が豊富で、引き出しの多さからコミュニケーション能力が高いこと
(「はじめに」より)
こうしたいい面があるのに、なぜ器用貧乏であることに悩んでしまうのでしょうか。その原因は、「自分にとってなにが大事なのか」、すなわち“自分軸が明確になっていない”ことにあるのだと著者は指摘しています。
しかし自分軸は、正しいプロセスを踏むことによって探し出すことが可能。そして自分軸を見つけることで、公私ともに「なにをやっても中途半端」な器用貧乏さんから脱出できるのだそうです。つまり本書では、そのための方法を多角的に紹介しているわけです。
そのためにさまざまなワークが用意されているのですが、ここでは第2章「器用貧乏さんから『才能長者』さんへ」に焦点を当て、自分軸についての基本的な考え方を確認してみたいと思います。
なぜ自分軸を見つけないといけないのか
著者によれば、器用貧乏であることに悩む原因は、「自分にとってなにが大事なのか」、すなわち“自分軸”が明確になっていないから。
自分軸とは文字どおり、「自分」にある「軸」のことです。軸とは物事の中心にあって支えになるものを意味しますから、なにかを動かそうとしたり、先に進もうとする際に軸がないと致命的な状態になってしまうわけです。
つまり、自分軸がなければ自分にとって何が大切なのか、ひいては、自分の人生をどう生きるのか、という判断を他人の価値観に委ねなければならず、いつまでたっても人の言いなりや世間に流されて生きるという状態になってしまいます。だから誰もが見つける必要があるのです。(45ページより)
たしかに軸ナシの状態だと、自分の意見を打ち出す勇気が持てなかったり、人のいいなりになってしまったりすることになってしまうかもしれません。だからこそ自分軸を持つことが大切であり、それができるようになれば、判断や行動の基準が持てるようになるわけです。(43ページより)
ポイントは、自分にピンスポットを当てること
自分軸を明確にすると、「やる気」「能力」「やり方」「ゴール・目的」を見出すことができるそう。しかも“軸のモト”は、誰のなかにもあるものなのに、それに気づいていない人が多いのだといいます。
器用貧乏さんは何でもある程度は器用にこなすことができるので、自分では自分の良いところや特徴に気がついていない方がとても多いです。例えるなら、「ミラーボール」のような存在なのです。
誰しもが複数の自分の特徴を持っていますが、器用貧乏さんは特に広範囲の知識や経験を有しています。ミラーボールの鏡の1枚1枚にそれらが書かれているイメージです。キラリと光る「強み」がいくつもあるのに、平均的にライトが当たり、フロア全体を照らしています。(49ページより)
いわば多面体であるために、なにをやっても突出したものが見出せず、自分では強みを発見しづらいということのようです。だとすれば、誰かに光を当ててもらうことで、自分のどの面が活かされているのか(=強み)を認識できるはず。
著者がいう器用貧乏さんには、多面体である自分の全方向に光を当てていたり、逆に自分で照明を消して真っ暗にしていたりする人も多いようです。では、どうすればいいのでしょうか? その答えは、一点の光(=ピンスポットのような光)を自分で自分に当てられるようになること。
それができれば、唯一無二の自分だけの輝き、すなわち才能を見つけ出すことができるわけです。その結果、器用貧乏から脱して「才能長者」の輝きを世に放てるようになるそう。ちなみに才能長者とは、「才能を活かして富を得たり、理想の人生を歩める幸福な人」のことを指すようです。
才能長者になると、いままで器用貧乏が理由であきらめていたことや、損をしたり報われない思いをしてきたことが解消されるといいます。
そして自分の才能がわかって漠然とした不安がなくなれば、いままでまわりの人に流されたり、いわれるがままにやっていたことのために費やしていた時間やお金も使わなくてよくなるということ。
もちろん仕事においても、「できるからやっていた」というスタンスを脱却し、本当にやるべきことに時間を費やせるようになるわけです。
また著者のもとには、メンタル面でも「自分に許可を出せるようになった」「いまの自分でいいんだと思えるようになった」「自分の背中を押せるようになった」といった意見も数多く寄せられているのだといいます。(49ページより)
器用貧乏×自分軸=才能長者へ
器用貧乏で自分の良さがわからず全方位を照らしていたミラーボール状態から、「自分にとって何が大事なのか」というピンスポットで自分自身を照らし出すことで、自分軸が明確になり、才能長者になれます。(53ページより)
つまり才能長者になるためには、いままでと違う自分になる必要はないということなのでしょう。自分軸を発見し、それを活かしていけばいいだけであるようです。(53ページより)
著者は2011年からメンタルコーチとして活動し、目標達成に関する講座やセミナーを通算1500回以上開催してきたという人物。そうしたバックグラウンドに基づいて書かれた本書を参考にすれば、器用貧乏な自分からの脱却を実現できるかもしれません。
Source: 総合法令出版