コピーライターが実践する、人のこころを動かす「強いことば」をつくる3原則

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キャッチコピーのつくり方

『キャッチコピーのつくり方』

著者
川上 徹也 [著]
出版社
日本実業出版社
ジャンル
産業/商業
ISBN
9784534061188
発売日
2024/07/19
価格
1,540円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

【毎日書評】コピーライターが実践する、人のこころを動かす「強いことば」をつくる3原則

[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)

著者によれば『キャッチコピーのつくり方 一瞬で心をつかむ、一生役立つスキル』(川上徹也 著、日本実業出版社)は、「日々忙しくすごすビジネスパーソンのために、『コピーライティングの基本的な考え方』と『キャッチコピーをつくるプロセス』について、簡潔かつ核心部分だけを解説したもの」。

根幹の部分に絞って解説されているため、さまざまな分野に活用しやすく、その守備範囲は「広告」「販促」のキャッチコピーだけにとどまらないそう。マーケティング戦略を立てる際の「コンセプトの立案」を筆頭に、「企画書」「メール」「案内文」「WEBコンテンツ」「プレスリリース」など、さまざまなビジネス文章のタイトルや見出しに活用できるというわけです。

なお、「広告コピー」を書くだけでなく、広く「人の心をつかむことばを見つけ、短く的確に表現する能力」のことを、著者は「キャッチコピー力」と名づけています。

「キャッチコピー力」が役立つのは、ライティングの場面にとどまりません。

経営戦略、事業構築、商品開発など、経営の根幹に関わる「理念」「パーパス」「ビジョン」を生み出すこともできます。リーダシップや組織運営などにも、言葉は重要な役割を果たします。(「はじめに」より)

ことばは、あらゆる企業活動の中心に位置するもの。つまり「キャッチコピー力」は、多くのビジネスパーソンにとって必要不可欠な能力だということです。ちなみにご存知の方も多いでしょうが、著者は企業や団体の「理念」や商品の「コンセプト」を1行に凝縮する「川上コピー」を得意分野とするコピーライター。

つまり本書においては、その活動のベースとなる部分を凝縮しているわけです。きょうは序章「キャッチコピーをつくる前の大前提」に焦点を当て、基本的な考え方を確認してみたいと思います。

ことばを強くする方法

「キャッチコピー」をつくる際の“原則中の原則”は、「強いことばを使う」ことだそうです。理由はもちろん、弱いことばには誰も反応しないから。とはいえ、このフレーズを使えば必ず「強いことば」になるという魔法のようなワードがあるわけではないのが難しいところでもあります。

それどころか、誰が使うか、あるいは時と場合によっても「強いことば」は変化するものです。だとすれば、どうすればことばに「力」が宿り、「強いことば」になるのでしょうか?

この問いに答えるべく、著者は「ことばを強くする3つの原則」を明らかにしています。それぞれを確認してみましょう。(32ページより)

1:常套句(空気コピー)を使わない

「陳腐な言葉や一般論が消費者の耳に届くことはない」(36ページより)

これは広告のパイオニアとして知られるクロード・C・ホプキンスの著書『広告マーケティング21の原則』内にあることばだそうです。

使い古された陳腐なことばのことを「常套句」、フランス語では「クリシェ」と呼びますそんな“常套句でクリシェなフレーズ”を、著者は「空気のような存在」という意味になぞらえ「空気コピー」と名づけたのだとか。

「空気コピー」は業種などによっても異なり、たとえば食品業界でいえば「こだわりの」「厳選した」、情報システム業界なら「ソリューション」「最適化」「エンゲージメント」などが空気コピーの典型であるようです。

競合商品や同業者が言っても成立するようなキャッチコピーは、多くの場合「空気コピー」です。

「空気コピー」では人の心は動きません。当然、望む結果が生まれることもない。

ちゃんと「気」を入れた「本気コピー」を書く。(37ページより)

そう決意して実践するだけでも、読み手が反応する「強い言葉」になる可能性は高まるといいます。(36ページより)

2:ことばの化学反応を考える

「強いことば」というと、まったく新しいフレーズなどを発明しなければならないように思われるかもしれません。しかし、そういうことではないようです。それぞれのことばは平凡であっても、組み合わせ次第で「強いことば」になることもあるわけです。

ちなみに映画やテレビ番組、楽曲などのタイトルにも、「ことばの組み合わせで化学反応を生む」という手法はよく使われるそうです。

言葉の化学反応は、「オクシモロン(oxymoron)」から考えてみることも有効です。

「オクシモロン」とは修辞法の1つで、意味の矛盾する語句を並べて効果的な言い回しにするものです。日本語では「対義結合」「撞着語法」などと呼ばれています。(39ページより)

互いに意味が矛盾する表現を組み合わせることが基本で、たとえば「急がばまわれ」「公然の秘密」「負けるが勝ち」「生きる屍」「小さな巨人」などの慣用句もオクシモロンになっています。ことばの化学反応を起こすことで、「強いことば」になり、読み手が反応する可能性が高まるのです。(38ページより)

3:リズム、語呂をよくする

キャッチコピーは、リズムや語呂で印象が変わってくるもの。そこで著者は、キャッチコピーをつくったら、何度も声に出して読みながら自分の耳で確認することを勧めています。ちなみにリズムや語呂をよくする代表的な手法は3つあるそうです。

3つのことばを並べる

同じようなフレーズを3つ連続して並べると、リズムがよくなり記憶に残りやすくなるといいます。

韻を踏む

韻を踏むとは、「語尾をそろえ、同じ音にする」こと(頭をそろえる場合は「頭韻」)。音が繰り返されることでリズムや勢いが生まれるわけです。

対句にする

「帯に短し、たすきに長し」など、詩や慣用句で使われることの多い対句とは、語格、表現形式が同一、または類似している2つの句を相対させて並べること。

似たようなフレーズを2つ並べると、お互いが際立ってリズムがよくなり、多少長くても記憶に残りやすくなるわけです。

「強いことばにする」ための基本として、まずはこの3つを覚えておくとよいようです。(40ページより)

流し読みすれば30分もかけることなく読み終えられるものの、その内容は一生役立つと著者は確信しているそう。ビジネスをさらにブラッシュアップさせたいなら、そんな本書を通じてキャッチコピーのつくり方を身につけてみてはいかがでしょうか。

Source: 日本実業出版社

メディアジーン lifehacker
2024年8月1日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

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