『新・東京の喫茶店』
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『新・東京の喫茶店』川口葉子著
[レビュアー] 尾崎世界観(ミュージシャン・作家)
2011年に出版された『東京の喫茶店』に続く第二弾。文字通り、東京にあるオススメの名店をテーマやエリアごとに紹介していく。
こうした、いかにもガイドブック然としたものは数多(あまた)あれど、読んで行きたくなるどころか、逆に行くのが不安になったのは本書が初めてだ。コーヒーはもちろんのこと、店主の人柄や美味(おい)しそうな料理、こだわりの内装まで。強く興味を惹(ひ)かれつつも、果たして自分も同じような体験ができるだろうかと、ちょっと怖くなる。
それは、その文章や写真から、著者自身がとことん自分の為(ため)にそこに居る様子が伝わってくるからに違いない。行くだけで楽しませてもらえる映画館や美術館などと違い、そこへ行った自身の「これまで」と「これから」が浮き彫りになるから、喫茶店は自分が試される。気の置けない相手とお喋(しゃべ)りを楽しんだり、忙(せわ)しない毎日の中でホッと一息つくのも良いが、せっかくここで紹介されている店に行くのなら、じっくり自分と向き合ってみたい。
勇気を出して、まずはあの店に行ってみようと思う。(実業之日本社、1980円)