『刑の重さは何で決まるのか』
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『刑の重さは何で決まるのか』高橋則夫著
[レビュアー] 宮部みゆき(作家)
本書の冒頭で取り上げられている事件がその典型だが、残酷な事件報道に接すると、私はつい感情的に「犯人はできる限り重たい刑に処せられるべきだ」などと考えてしまう。でも、その「重たい刑」とはどんな基準で決められるものなのか、他のどんな罪と刑に比して「できる限り重たい」のか説明を求められると、途端に言葉に詰まる。
言い訳がましいが、これは私一人が不勉強だからではないはずである。ごく普通に暮らしていると、司法の道に進もうという若者以外は、こうした基本的な罪と罰の仕組み、「刑法学」「量刑論」について知り、学ぶ機会は巡ってこない。その唯一の例外が、あなたや私が刑事事件の裁判員に選ばれたときだとは思うが、市民参加による「開かれた司法」の実現には、裁判員候補となる市民の多くが、事前に基礎的な考え方を身につけていることが望ましいはずである。本書はそのための入門書だ。このちくまプリマー新書をはじめ、学生を主な読者層としている各社の新書は、実は「なかなか学ぶ機会がない」大人たちにとっても有り難い勉強本なのです。(ちくまプリマー新書、946円)