『日本のウナギ 生態・文化・保全と図鑑』
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『日本のウナギ』海部健三/脇谷量子郎文/内山りゅう写真
[レビュアー] 長田育恵(劇作家・脚本家)
まだ残暑が続く折、鰻(うなぎ)の話題はいかがでしょうか。
日本に生息するウナギの産卵場所がマリアナ諸島の西方海域であると知ってから、私はウナギの生態に魅了されてきた。本書では日本に生息するウナギ属魚類に関する生態をまとめながら、ウナギと人間の歴史的・文化的背景を詳説し、未来の保全も展望する。
本書の魅力は生態写真にある。ウナギたちはレプトセファルス幼生期に海流に乗り、シラスウナギと変態して日本に接岸するが、辿(たど)り着いた河川で障害物を越え遡(そ)上(じょう)するドラマをカメラが捉える。他の生物を捕食したり、隠れ場所を巡って個体間で争っていたり。その表情豊かに躍動している姿に、ウナギたちが絶滅しないよう、改めて願わずにはいられない。
今後の保全についても、周辺国の排他的経済水域も通過しながら日本に接岸することから、国際協力も含めた多角的な視野で検討し、興味深い。(山と溪谷社、4950円)