『あんなに可愛い猫ですら嫌う人がいるのにみんなから好かれようなんて不可能です。』
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【毎日書評】仕事はマラソンのようなもの、無理して短距離走のような働き方していませんか?
[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)
『あんなに可愛い猫ですら嫌う人がいるのにみんなから好かれようなんて不可能です。』(しろねこ 著、フォレスト出版)の著者は、いわゆる「陰キャ」だそう。心のどこかに生きづらさを感じながら育ち、社会に出てからはブラック企業で過酷な労働環境に苦しめられたのだといいます。
たとえばパワハラを受けても、どれだけ残業させられても文句はいえず、眠れない日々が続いていたというのです。しかし現在は、ほとんどストレスのない職場で働き、家には家族が待っていて、穏やかに生きているのだか。
なぜそこまで変われたのかが気になるところですが、それは「自分の根底にある性格的気質は変わらないし、変える必要もない」と思えたからなのだそうです。
無理やり、陽キャを演じる必要も友達をたくさんつくる必要もないし、嫌いな人とつき合い続ける必要も地獄のような職場で働き続ける必要もない。
なにより自分自身を消耗させないことが大切なんです。
敵はつくらないように、人間関係を整理する。
自分にとって本当に必要な人を見極める。
自分を大切にしてくれる人や自分にとって身近で大切な人を大事にする。
苦しすぎる環境にあるなら、「逃げる勇気」を持つ。
ありのままの自分でいる。
「ない」ものより、「ある」幸せを数える。
(「はじめに」より)
それが大切だと考える著者は、根暗でメンタルが弱く、つらい経験もたくさんしてしまうなか、「心地よく生きていくための戦略」を言語化し、X(旧Twitter)に投稿し続けているそう。そして、それらの一部を抜粋・ブラッシュアップし、そのことばをつくった背景や意味、自身の想いなどを書き加えたものが本書なのです。
きょうはそのなかから、「仕事」に焦点を当てた第3章「しょせん仕事は人生の暇つぶし。苦しすぎるなら、いつ逃げ出してもいいんだよ。」に焦点を当ててみたいと思います。
出社前に「まだ大丈夫」と思ったら?
経験則なんですが、
出社前に「まだ大丈夫」と
自分に言い聞かせている時点で
「もう大丈夫ではない」ので、
その環境から逃げ出したほうがいいです。
(110ページより)
本当に大丈夫なときは、自分に対して「大丈夫、大丈夫…」などといい聞かせないもの。著者はそう指摘しています。本当は大丈夫ではないのに、「まだやれるよね…?」と自分に無理やり問いかけ、「大丈夫だ」と思い込もうとしている状態なのだと。
以前、勤めていたブラックな会社で、私はよく1人でサービス残業をしていました。そんな毎日を送っていたある日、別の部署の人に「大丈夫?」と優しく声をかけられたことがありました。そのとき、思わず涙が溢れそうになったんです。
そこでやっと、自分は限界なんだ、追い詰められているんだと、認識しました。(111ページより)
自分に「大丈夫、大丈夫」といいはじめたら、それは限界に近づいている証拠なのかもしれません。(110ページより)
仕事上の自分の代わりはいる
「自分の代わりはいない」と思って
心身にムチを打ちながら働いていたけれど、
自分が辞めたところで会社は潰れませんでした。
仕事上の自分の代わりはいます。
会社はあなたが壊れても助けてはくれません。
最終的に自分を守れるのは自分だけです。
(112ページより)
会社には、組織としての上下関係や主従関係はあっても、人間としての主従関係はないはず。だからこそ、自分の生活やメンタル面を犠牲にしてまで働き続けないでほしいと著者は訴えています。自分に対して「大丈夫、大丈夫」といいはじめたら、限界が近づいているのかもしれないと冷静に判断する必要もありそうです。(110ページより)
とにかく、自分の心身を壊されるような会社はすぐにでもやめるべきだということ。そんなときには、「自分が辞めたら、この仕事をやる人がいなくなってみんなが困るかも」などと考えてしまうものかもしれません。しかし、そんなことを考える必要はないというのです。なぜなら、それで会社が潰れることはなく、きっとなんとかなるものだから。
「次の仕事が見つからなかったらどうしよう」と思うこともあるかもしれませんが、案外、次の仕事も見つかるものです。あなたの人生は、その会社のためにあるわけではありません。(113ページより)
だから、いつでも辞められるように、普段から自分の市場価値を上げる努力をしたり、視野を広く持つことを心がけるべきなのだといいます。(112ページより)
健康を犠牲にする必要はない
健康を犠牲にしてまで
仕事なんてしなくていいんです。
とくに心はガラスみたいなもので
壊れたら修復は難しいから、
自分が壊れる前に逃げましょう。
逃げることは恥ずかしいことじゃありません。
(116ページより)
仕事は長距離マラソンのようなもの。にもかかわらず短距離走のような勢いで仕事をしていれば、いつか身体は壊れるかもしれません。そればかりか、心まで壊れてしまう可能性も否定できないでしょう。
私自身も、何か仕事を頼まれると「大丈夫ですよ〜」と言いがちですが、最近は、「大丈夫ですよ〜」と言った後でも、ちょっと考えるようにしています。「あ、やっぱり無理だな」と思ったら、ちゃんと後で断るようにしています。(117ページより)
つまり、自分の心身の健康を犠牲にするようながんばりは必要ないということです。(117ページより)
人間関係がうまくいかない、どうしても明るく振る舞えない、職場の雰囲気がつらい、生きること自体が苦しいなど、なんらかの「生きづらさ」を感じている方は少なくないはず。そこで、よりよい明日につながる糸口を見つけるために、当事者目線を前提とした本書を参考にしてみてはいかがでしょうか。
Source: フォレスト出版