『みたてのくみたて』
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『みたてのくみたて』田中達也著
[レビュアー] 尾崎世界観(ミュージシャン・作家)
著者はSNSでも絶大な人気を誇り、国内外で数多くの展覧会を開催するミニチュア写真家だ。ささいな気づきとユーモアに溢(あふ)れた作品、それらをどのように生み出していくかが、本書では惜しみなく語られている。
著者は自らを見立て作家とも呼ぶ。何かにたとえて形、色、動きなど、自在にスケールを飛び越えながら「親しみ」と「発見」を繋(つな)げることで、慣れ親しんだ日用品や食べ物が一瞬で新たな世界になる。
驚くのは、普段から自分が無意識にやっていることの多くが、本書に創作の種として書かれていること。そうした「無意識」を意識することから、見立ては始まるのかもしれない。
SNSを始め、そこらじゅうに誰かの悪意が溢れている今、何かを何かにたとえる力は、きっと自分を救う武器になる。見立ては世界の抜け道だ。そんなことを教えてくれる一冊。(ダイヤモンド社、2090円)