『スタンフォードの脳神経科学者が証明!科学がつきとめた「引き寄せの法則」』
- 著者
- ジェームズ・ドゥティ [著]
- 出版社
- SBクリエイティブ
- ジャンル
- 文学/外国文学、その他
- ISBN
- 9784815624972
- 発売日
- 2024/06/30
- 価格
- 1,870円(税込)
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【毎日書評】宇宙はまったく関係ない。自分を変える「マニフェステーション」の技術
[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)
私たちの多くは物心ついたころからずっと、なにか外側の力に、自分の問題を解決してもらいたいと願っている――。『スタンフォードの脳神経科学者が証明!科学がつきとめた「引き寄せの法則」』(ジェームズ・ドゥティ 著、桜田直美 訳、SBクリエイティブ)の著者はそう指摘しています。
たしかに思い当たるふしがあるのではないでしょうか。それは宝くじに当たることかもしれませんし、自分の願いがすべて叶えられることかもしれません。しかし、いずれにしても人は誰しも少なからず、そんな力を信じたいと思っていたわけです。著者もかつてはそうだったようです。現在は別としても。
いまのわたしは、神経科学者であり、医師でもあるので、そんな力に科学的な根拠はないということはよくわかっている。
とはいえ、人間の精神には不可能に思えるような変化を起こす力があり、それを裏づける科学的な証拠がたくさん存在するのも事実だ。この現象は「マニフェステーション(願望実現)」と呼ばれている。(「はじめに 願望実現についての本当の秘密」より)
著者が考える「マニフェステーション」とは、自分の意図(自分の本来の目的、本当の願望)を明確にし、それを潜在意識に埋め込むということ(ここでいう潜在意識とは、自分が自覚していることの下に隠れている意識を指すようです)。
意図が潜在意識に埋め込まれると、脳が「その意図は重要だ、価値がある」とみなしたり、その意図が自分のなかで大きくなったりし、その結果、目標達成をつかさどる脳の部位が活性化されるというのです。
具体的には、その意図(どんな意図でもかまわない)が脳内で意識されると、目標に集中する脳の部位がつねに活性化された状態になる。(「はじめに 願望実現についての本当の秘密」より)
だからこそ著者は本書の冒頭で、「宇宙はあなたのことなどこれっぽっちも気にかけていない」と断言しているのです。本書のタイトルにもある「引き寄せの法則」においてはしばしば、宇宙との関係性が強調されることがあります。しかし科学的な視野で捉えた場合、それは説得力に欠けたものになってしまうわけです。
これはとても重要な指摘ではないでしょうか。そこで今回は、20ページに及ぶ「はじめに 願望実現についての本当の秘密」のなかから、さらに重要なポイントを抜き出してみたいと思います。
意図が人生をつくる
上記の引用部分について、著者はさらに補足をしています。宇宙の力が影響しているのではなく、「わたしたちのなかにある意図が、わたしたちの人生をつくっている」のだと。
その内なる力を使い、脳内にあるリソースを活用できれば、“外側の環境にただ反応する状態”から少しずつ脱することができるようになるそう。その結果、自分の内部のもっと深いところから生まれる意図のとおりに生きることができるようになるというわけです。
したがって、もし願望を実現したいのであれば、そのファースト・ステップは「外側の力は自分の問題を解決してくれる」という考えから自分を切り離すこと。豊かで義理深く、目的意識のある人生を送りたいのなら、自分の外側にある力などに媚びる必要はまったくないのです。
そんなことより重要なのは、「自分に幸せと成功をもたらす力は自分の精神のなかにある」と信じること。非常にシンプルではありますが、「引き寄せの法則」の周囲にさまざまな情報が錯綜しているからこそ、これは見逃すべきではない考え方であるように思えます。(3ページより)
宇宙のせいではない
あなたの精神が、理想の人生を手に入れるのを阻む障害をつくりだしている。
と同時に、あなたの精神は、理想の人生を実現する意図を生みだす源でもある。それが「本当の秘密」だ。
悪いことが起こるのは、宇宙のせいではない。それはあなた自身の精神がつくりだした現象だ。(4ページより)
神経科学者である著者は、数十年にわたって人間の脳を専門に研究してきたそうです。そして医師としてはスピリチュアルな治療を実践し、ダライ・ラマをはじめとする精神的なリーダーたちと協力し、“共感と思いやりの心”を多くの人に教えてきたのだといいます。
また同時に、そのすべての教えを、手痛い失敗を重ねながら学んできたひとりの人間でもあるとも認めています。だから、「マニフェステーションとは、可能性を信じる姿勢を養うことだ」とはっきり主張することができるのでしょう。
著者は子どものころから、ネガティブな状況が自分の人生を制限してしまうということに気づいていたのだそうです。なぜなら貧しい家庭で育ち、父親はアルコール依存症、母親は慢性的にうつ状態で自殺願望を持っていたから。そのような環境で育つと、「人生とはなにかの罰か呪いである」、あるいは「なんの理由も脈絡もなく不幸が襲ってくるカオスなのだ」と思い込むようになるというのです。
マニフェステーションの重要性を強調するのは、そうしたバックグラウンドがあるから。マニフェステーションが苦しみをすべて解決してくれるわけではないけれど、それでも可能性を信じ続けることこそが重要なのだということです。
つまり、わたしが考えるマニフェステーションの本質とは、心身ともに健全で幸福な状態=「ウェルビーイング」を実践することであり、いい人生を送ろうという強い意志をもつことだ。
マニフェステーションによって、いわゆる「楽観主義的傾向」を育てることもできる。
楽観主義的傾向のある人は、人生のあらゆる重要な状況でいい結果になると信じることができる。(7〜8ページより)
「意図したものが現実にならなければ、マニフェステーションが成功したとはいえない」という意見もあるかもしれません。しかし、著者はそうは思わないそうです。
意図を何度も何度も視覚化することの本当の価値は、「人生はなんとかなる」という前向きな姿勢で生きられるようになることだ。何があっても最終的にはうまくいくと信じられる人は、外側の状況がどうなろうと、それを受け入れ、力強く立ち直ることができる。(8ページより)
つまりマニフェステーションとは基本的に、理想の人生に関する思考やイメージを、意図的に自分の潜在意識に埋め込むプロセスを指すというわけです。(4ページより)
マニフェステーションは宇宙によってもたらされるものでもなければ、選ばれし1パーセントの人だけに許された秘技でもないと著者はいいます。
むしろ、そのときの肉体的、精神的、感情的な状態にかかわらず、どんな人にでも実践できる技術なのだと。その主張を裏づける仕組みや方法が凝縮された本書はきっと、人生をよりよい方向へと導いてくれることでしょう。
Source: SBクリエイティブ