『結局、集中力が9割 脳のプロが教える誰でも集中力が最大化する方法』
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【毎日書評】「集中力」が続く、途切れない。睡眠の質を高める8つのコツ
[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)
「すぐに飽きる」「違うことをしたくなる」「なにかと気が散る」「ついダラダラしてしまう」など、思うように集中力が続かない現実に悩んでいる方も少なくないはず。
しかし脳内科医である『結局、集中力が9割 脳のプロが教える 誰でも集中力が最大化する方法』(加藤俊徳 著、アスコム)の著者は、「じつは集中力のない人はいない」のだと述べています。いわれてみればたしかに、「自分には集中力がない」と思っていたとしても、好きなことになら没頭できたり、短い時間で結果を出せたりするものです。
にもかかわらず「集中できるときと、できないとき」があるのは、「脳のしくみ」の影響であるようです。
集中力は、気合や根性といった「気持ちの持ちよう」次第でどうにかなるものではなく、ましてや生まれつきの才能に関係しているものでもなく、私たちの脳で生み出されているというのです。
つまり集中力を身につけたいなら、「脳のしくみ」を理解し、それを正しく使いこなすことこそが重要だというわけです。
私自身、集中力の欠如に悩み、約40年間、脳と向き合い続け、そして、実際に脳を変えてきたからこそ、
「集中力は、脳が生み出す力である」
「脳を鍛えれば、年齢に関係なく、集中力はアップする」
「集中力をアップすれば、人生が変わる」
という確信に至っています。
(「はじめに 願望実現についての本当の秘密」より)
ポイントは、本書がこうした著者自身の経験と、そして医師としての知見に基づいて書かれているということ。そのため、大きな説得力が生まれているわけです。
きょうは第4章「努力に頼らない『集中脳』の整え方」のなかから、「睡眠」に関するトピックスを抜き出してみたいと思います。平均8時間以上眠るだけで、驚くほど集中力がアップするというのです。
徹夜でがんばるより、さっさと寝たほうが結果は出る
著者はかつて、研究に熱中するあまり睡眠時間を削っていたそう。しかし、それを「人生最大の失敗」だったと感じているからこそ、いまは仕事や研究の時間以上に「平均睡眠時間を8時間以上」キープすることを大切にしているのだそうです。
もちろん、脳研究への情熱を失ったわけではありませんが、それでも睡眠時間を最優先しているのは、「寝る間も惜しんで研究をするより、質の高い睡眠を8時間以上はとったほうが、日中の集中力が12時間ほど落ちないという結果になった」からです。
充分な睡眠をとると幸福感が高まって、朝起きてから寝るまで、高い集中力を維持できます。(233〜234ページより)
つまり8時間以上の睡眠をとれば、日中の集中力が午後の眠気に邪魔されなくなるということ。そのため仕事の質が上がり、こなせる量も増え、ほとんどストレスを感じなくてすむというわけです。
そもそも、いったん途切れてしまった集中力をふたたび上げるとしたら、どうしてもストレスがかかってしまいます。つまり、集中力が日中に下がってしまう回数が多い人ほど、それを上げるためにストレスを受けているのです。
睡眠時間が短かったり、熟睡できなかったり、寝つきが悪ければ、「睡眠中にしかできないこと」がおろそかになって、翌日には、覚醒が上がらず、眠気が脳を支配し、脳に悪影響を及ぼします。
すなわち、睡眠中の脳の役割を十分に遂行できるようにする「睡眠時の集中力」が必要なのです。(236ページより)
だからこそ、「明日、失敗が許されないプレゼンがある」などというときは、夜遅くまで準備をするよりも、早く寝て、脳の状態を整えるべき。そうすれば、覚醒時の集中力が高まるということのようです。(232ページより)
集中力を高めるための睡眠のポイント
著者いわく、集中力を高めるための睡眠のポイントは6つあるそうです。
1.大人は平均8時間以上の睡眠が必要
日中の脳の働きを活性化するには、「平均8時間以上(7時間30分〜9時間)」の睡眠時間を確保することが重要だということ。
2.22時に寝て、7時に起きる
人間の脳と体には「朝起きて、日中に活動し、夜は眠る」という機能が備わっています(「概日リズム(サーカディアンリズム)」)。これは、ホルモンの分泌、内臓の働き、自律神経など、人間が生命を保持するための大切な機能。
具体的には、「22時に寝て、7時に起きる」(22時だと遅い場合は、21時に寝て6時に起きることを目標にする)習慣をつけると、脳は本来持っている、いちばんよい働きをしてくれるようです。
3.17、18時以降のカフェインはNG、アルコールは就寝3時間前まで
コーヒー、紅茶、日本茶、コーラ飲料、チョコレートなどに含まれているカフェインには覚醒効果(目覚まし効果)があるため、日中は集中力を高めてくれます。
しかし就寝前にとりすぎると、睡眠の質を下げてしまうことに。そのため、「17、18時以降(少なくとも就寝2時間前以降)」はとらないようにしたほうがいいようです。
4.寝る前の3時間は、パソコン、スマホ、テレビを見ない
液晶が発する「ブルーライト」には脳を覚醒させる作用があるため、見続けていると概日リズムを乱すおそれがあります。
つまり就寝前にスマホなどの画面を見ることは、脳に「覚醒しろ」「注意しろ」「起きろ」と命じているのと同じ。そのため寝る3時間前からは見ないようにするべき。
5.部屋を暗くして寝る
夜になって脳内に眠くなる物質「メラトニン」が放出されると、そののち「成長ホルモン」が分泌されます。成長ホルモンは、骨、筋肉、臓器、血液など、すべての細胞をつくる指令を出しているそう。
しかしメラトニンは光を浴びると減少するため、寝室の照明が明るすぎると分泌が抑えられてしまいます。そこで、暗くして就寝することを意識したほうがよいのです。
6.寝支度を整えて「よし、寝よう」と脳にいい聞かせる
テレビをつけたまま寝てしまったりしたら、脳は十分に休めません。そのため、寝落ちしたりしないで寝支度を整え、「よし、寝よう」と自分にいい聞かせ、脳をオフに切り替えることが大切。(238ページより)
集中力は誰にでも発揮でき、何歳からでも高めることができる能力だと著者は断言しています。そこで、もし集中力のなさにお悩みなら、本書を参考にしながら脳のしくみを理解し、集中力アップを目指してみるべきかもしれません。
Source: アスコム