やりたい気持ち、意欲を引き出し目標達成をアシストする「コーチング」の基本

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読むだけコーチング

『読むだけコーチング』

著者
三宅 俊輝 [著]/八木 真理子 [著]
出版社
白夜書房
ジャンル
社会科学/経営
ISBN
9784864945189
発売日
2024/08/30
価格
1,760円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

【毎日書評】やりたい気持ち、意欲を引き出し目標達成をアシストする「コーチング」の基本

[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)

読むだけコーチング』(三宅俊輝 著、白夜書房)の著者は、自動車整備士を経て研修講師・プロコーチとして独立したという異色の経歴の持ち主。これまで「メンタルコーチ(心の整備士®︎)」として、のべ550社、1万5,000名を超える人たちをサポートしてきたのだそうです。

向き合ってきたのは、自己否定感に苛まれ、自信が持てずにいる方々。そうした人たちに対して自分らしく生きるすべを提供し、「成功」へと導いてきたというのです。

ところで、よく耳にする「コーチング」については、いろいろな捉え方があるのではないでしょうか。スポーツ選手を育成する「コーチ」を思い浮かべる人もいらっしゃるかもしれませんし、そもそも、「いまさら人に聞きづらい」という側面もありそうです。

しかし本書でいうコーチングとは、「相手(クライアント)のやりたい気持ちや意欲を引き出し、目標達成をサポートするコミュニケーションスキル」を指すようです。

なお著者は、現代においてはコーチングが必要とされる場面が増えてきているように感じているのだといいます。

したがって職場においても、たとえば職場の人間関係に悩む若いビジネスパーソンや、部下に自主的に働いてほしいと思っている上司などにとっても、コーチングは有効なツールだというのです。

本書では、コーチングの意義や部下のモチベーションの高め方、GROWモデルと呼ばれるコーチングの基本の進め方、コーチングの際に必要となる「傾聴」や「質問」といったテクニック、さらには1on1の実践例まで、1冊で基本的なコーチングをマスターできるように書かれています。(「はじめに」より)

そんな本書のなかから、きょうは第1章「コーチングとは何か」に焦点を当て、基本的な事項を確認してみたいと思います。

コーチングの歴史

「コーチ」(coach)という言葉が生まれたのは、1500年代。もともとは「馬車」を意味していました。人気ブランドの「COACH」のロゴにも馬車がデザインされています。

その後、「大切な人をその人が望むところまで送り届ける」という意味が加わり、1840年代に入ると個人教師のことを「コーチ」と呼ぶようになります。さらに1880年代にはスポーツの指導者も含むようになりました。(13ページより)

マネジメントの分野に「コーチ」の用法が登場したのは1950年代のこと。経営学の研究が盛んな欧米では、そののち1970年代からビジネスコーチングが普及しはじめました。日本では1990年代後半のころに欧米からコーチングの概念が輸入され、徐々に拡大していったといいます。

一般社団法人国際コーチング連盟では、コーチングを「思考を刺激し続ける創造的なプロセスを通して、クライアントが自身の可能性を公私において最大化させるように、コーチとクライアントのパートナー関係を築くこと」と定義しているようです。

つまりコーチングは、「コーチとクライアントが信頼関係で結ばれ、コミュニケーションの力によってクライアントが新たな気づきを得たり、自身の目標を発見したりすること」となるわけです。(13ページより)

潜在的な悩みを引き出せる

たとえば、ある日を境に部下の口数が少なくなったり、うつむきがちになったりしたら、上司は「なにか悩みがあるのではないか」と考えるはず。そんなときに有効なのは、部下との1on1ミーティングを行い、上司の質問によって部下の悩みを引き出していくこと。

そうすれば、部下の悩みの原因を言語化・ビジュアル化し、対処可能な状態に持ち込むことができるわけです。

コーチングを行う前は、部下は「漠然とした不安」しかなかったかもしれませんが、コーチング後は「取引先に納期遅れを指摘しても、聞く耳を持ってくれないことに不安を感じている」「家族と大喧嘩して関係が修復できておらず、仕事にも身が入らない」など、具体的に特定できるようになります。(18ページより)

そのため、悩みを解決するための次のステップへと移れるようになるのです。(18ページより)

目標や「ありたい姿」が見つかり、行動が加速化する

コーチングには、クライアントの目標発見をサポートし、目標達成に向けてのアクションを後押しする効果もあるといいます。

仕事上の目標をなかなか見出せず、職業人としてどうありたいのかが発見できない部下がいたとしましょう。そんなときにはその部下に対し、傾聴と質問を繰り返すのです。なぜならそうすることで、目標や「ありたい姿」が定まるから。そのため、コーチングを終えたあとの部下はすぐに、目標に向かってアクションを起こせるようになるわけです。

たとえば、上司から営業目標を指示されても、ピンと来ていなかった部下の25歳のAさん。上司が1on1ミーティングを実施し、Aさんに対し、「どのような瞬間に最も充実感を感じるか?」や「3年後どういう自分になっていたいか」といった質問を行います。

そうすると、Aさんからは「お客様との会話の中でニーズを引き出し、自社商品の販売につながったときに充実感を感じる」「3年後は後輩もできるので、自分で営業成績を上げることはもちろん、後輩のサポートもできるようになっていたい」と具体的なゴールが出てきます。(19ページより)

つまりコーチングの目的は、ゴールに向かってのアクションをコーチが全力で応援すること。そうやって、Aさんのような部下が第一歩を踏み出す手助けをするのです。

忙しい日常生活のなかでは、自分の目標や「ありたい姿」を意識する機会はそれほど多くないかもしれません。だから迷ってしまうことになるわけですが、そんなときには上司がコーチングを行うことが大切。そうすれば、部下は必然的に「目標やありたい姿の発見」や「行動の加速化」を実現できるようになるからです。(19ページより)

基本から応用までを網羅した本書を参考にすれば、ビジネスの可能性が大きく広がっていくかもしれません。それが結果的に人生の転機になることも考えられるだけに、ぜひとも活用したいところです。

Source: 白夜書房

メディアジーン lifehacker
2024年9月18日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

メディアジーン

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