『にっぽん味噌蔵めぐり』
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『にっぽん味噌蔵めぐり』岩木みさき著
[レビュアー] 岡本隆司(歴史学者・早稲田大教授)
「脳みそ」「手前みそ」「そこがミソ」「みそをつける」。重要なことを「みそ」と表現する慣用句は、日本人の生活に味(み)噌(そ)が不可欠だったことの証(あかし)。
昨今は和食にくわえ、発酵食品もブームである。しかし条件を兼ねそなえるはずの味噌は、なぜか注目度が低い。
そんななか、味噌に魅せられた料理研究家が、全国百カ所以上の味噌蔵を探訪。簡にして要を得たそのルポルタージュは、味噌の奥深い魅力のみならず、それを生み出すひたむきな職人芸にも光を当てた。
酒飲みの酒蔵めぐりは、よく耳にする。けれども「初心者」がハマっての「味噌蔵めぐり」は、寡聞にして知らない。ページを繰るにつれ、年来の減塩圧力で忘れかけた懐かしい味を思い出す。
幼少のお正月といえば、白味噌じたての雑煮。これでおもちを三つも四つも食べた記憶も甦(よみがえ)ってくる。
なじみの西京味噌から、麦味噌・豆味噌・玄米味噌。こんなに味噌があるのか、と驚きながら、つい時を忘れた。レシピも目移り、今夜は減塩のほうを忘れて、堪能してみたい。(東海教育研究所、2200円)