自己肯定感の高い人は、自己効力感も高くなる。その理由は?

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レジリエンスが身につく自己効力感の教科書

『レジリエンスが身につく自己効力感の教科書』

著者
工藤 紀子 [著]
出版社
総合法令出版
ジャンル
社会科学/社会科学総記
ISBN
9784862809629
発売日
2024/09/10
価格
1,760円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

【毎日書評】自己肯定感の高い人は、自己効力感も高くなる。その理由は?

[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)

近年、「自己効力感」ということばを耳にする機会が増えたように感じます。でも、それは具体的にどのようなものなのでしょうか?『レジリエンスが身につく 自己効力感の教科書』(工藤紀子 著、総合法令出版)の著者による説明を引用してみましょう。

自己効力感(セルフエフィカシー)は、スタンフォード大学教授の心理学者アルバート・バンデューラ博士によって提唱された概念です。

自己効力感は、「自分ならできる」「自分ならきっとうまくいく」と自分の能力やスキルに対して、信じられている認知状態のこと。「自信」に近いものですが、ただやみくもに「できる」と思うのではなく、明確な根拠に裏打ちされた自信といえます。(「はじめに」より)

生きていくうえでは苦難も多く、たとえば一生懸命働いたとしても、その結果が運に左右されると信じてしまい、変化をポジティブに捉えられないことも少なくはありません。しかし、満足できる人生を実現するためにも、正確な行動を選び取れる能力である「自己効力感」を持つことが重要であるということ。

自己効力感を持つことができれば、「自分の人生は主体的に自分でつくり上げていける」という感覚のもとで、あらゆる目標にチャレンジすることが可能になります。さらに、未来が予測不可能な時代においては、「変化を喜んで許容する」姿勢を持てることが、想定外の変化を好機にして飛躍できるかどうかの決め手になるかもしれません。

なお、そこでは「レジリエンス」(resilience)――困難な状況であっても、それを乗り越えていく逆境力や精神回復力――が試されるのだそう。そしてこのレジリエンスを高めるためにもっとも効果的な方法が「自己効力感を上げる」ことだと著者は主張するのです。

2013年に一般社団法人日本セルフエスティーム普及協会を設立し、個人、企業、教育現場の3万人以上の人々に「自己肯定感」(セルフエスティーム)の研究を実施してきたという人物。そうした活動を通じ、個々の自己肯定感が向上すると、さまざまな効果が出ることを実感しているのだそうです。

しかし、そもそも「自己効力感」と「自己肯定感」はどう違い、どのように結びついているのでしょうか? 第1章「これからの時代を生き抜くために必要な『自己効力感』の基礎」の中から、その答えを探し出してみましょう。

自己効力感とは?

前述のアルバート・バンデューラ博士は、自己効力感を「自己の能力への確信と信頼」と定義したそう。これは、ある目標や行動に対して、「自分ならやればできる」と信じる度合いを表すようです。自分を信じる度合いが強ければ、たとえ目標の達成が困難だと感じても、諦めずにがんばることができるわけです。

ちなみに博士は、「人は誰でも、力強い自己効力感を持てれば、なんでもできる」「人々の日々の生活のなかで、自己効力感の働きほど影響力のあるものはおそらく他にない」と述べているのだといいます。

自己効力感が高いと、ビジネスはもちろん、何か新しいことにチャレンジするときや、困難な問題に直面したときなどに、その状況に対処するために必要なものはすべて自分の中にあると考えられます。

この感覚が自己効力感の先にある、逆境や失敗を成長の糧にして一歩踏みだす力となり、「レジリエンス」を高めることにつながるのです。(21ページより)

自己効力感は、「行動に直結するモチベーションを生み出し、それを高める源であり、行動に変化をもたらす先行要因である」と考えられているそう。そして現在では、ビジネスや経営、教育、スポーツ、予防医学などさまざまな分野で注目されているのだといいます。(20ページより)

自己効力感と自信との違い

ところで日常的に、「自信」ということばが使われる機会は少なくありません。そこで気になるのが、自己効力感と自信との違い。たとえば広辞苑(第七版)には、自信は「自分の能力や価値を確信すること。自分の正しさを信じて疑わない心」と書かれています。「自分自身」を信じることができているのですから、根拠は必要ないわけです。

それに対して、自己効力感は、自分の「能力」や「可能性」に対して信じることで、明確な根拠に基づいた自信であるといえます。自分の経験やスキル、能力や可能性を信じて「自分はできる」と思える根拠となるのは、過去の成功体験やそこまでの努力、学習したことやスキルの習得などからきています。(22ページより)

つまり自己効力感が「科学的に高めることができる自信」だといわれているのは、実践や経験などのトレーニングで高めることができるからだということです。(22ページより)

自己肯定感との関係

企業や教育現場で自己肯定感の研修を行なっているという著者は、自己肯定感と自己効力感が密接に関係していることをさまざまな事象から感じてきたのだといいます。両者の関係を理解することは、望む結果を得るための行動を起こす際に重要なのだとか。

自己肯定感は、「自分という存在」を好意的、肯定的に受け止め、長所だけではなく短所なども含めて自分をありのまま認め、自分を信頼している感覚です。

一方、自己効力感は、「自分が持っている能力やスキル」を使うことに自信があるという感覚です。(23ページより)

当然ながら、自己肯定感が高いと自己信頼も高くなります。自己肯定感も自己信頼も高い状態になると、自分の経験や努力、学習やスキルの取得におけるプロセスを肯定的に受け止められるようになります。したがって、それらを活用して“自分の能力を信じる根拠”をつくることができるわけです。著者によれば、これが自己効力感の基盤。

そもそも自分への自信は、自己信頼がないと脆くなってしまいます。そのため、自己肯定感が低いと自己効力感を強化するのが難しくなるわけです。

たとえば仕事で大事なプレゼンに失敗し、過度に自分を責めてしまい「能力がない」と思い込んでしまうとしたら、それは自己肯定感が低い状態。プレゼンに失敗したとしても、失敗を柔軟に受け止めて成長の機会と捉え、次に活かせるなら、自己肯定感が高い状態。

プレゼンの前から、「自分はうまくやれる」と信じていないなら、それは自己効力感が低い状態。失敗しても動じることなく、次の成功に向けた強い意欲で準備や努力を続けられるのであれば、自己効力感が高い状態。自分にはできると信じる気持ちが、プラスに働くわけです。

つまり、自己肯定感が高いと、総じて自己効力感は高い傾向になり、自己肯定感が低いと自己効力感も低くなる傾向があるということです。(23ページより)

著者はさまざまな場面において、失敗を恐れずどんどんチャレンジする力、次の一歩を踏み出すための「自己効力感」が強く求められていると痛感しているそう。あらゆる変化をポジティブに捉え、果敢にチャレンジしていけるようになるためにも、本書を参考にしながら自己効力感を高めていくべきかもしれません。

Source: 総合法令出版

メディアジーン lifehacker
2024年9月19日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

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