『精神科医Tomyの人づきあいはテキトーでいいのよ』
書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます
【毎日書評】「人づきあいはテキトーでいいのよ!」精神科医Tomyがそう伝えるわけ
[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)
『精神科医Tomyの 人づきあいはテキトーでいいのよ 無理せず「めんどい人」をかわすコツ』(精神科医Tomy 著、日本実業出版社)の著者は、専門的な知識や経験から導き出した「気持ちがラクになることば」を患者さんに届けている精神科医。
メッセージをより多くの人に届けたいという思いから、「気がラクになるヒント」を“オネエ口調でカジュアルに”発信しはじめたところ、大きな支持を得ることになり、本を書く機会も増えていったのだそうです(自分を「アテクシ」と呼ぶようになったのも、そのころからなのだとか)。
過去にも著作をご紹介したことがありますが、ポイントは肩の力を抜いたアプローチ。もちろんそれは、“人づきあいの悩み”についての解決策を解消するために書かれた本書についても同じです。
人づきあいには「めんどくさい場面」があり、そうした状況に直面するたび、私たちは「もっとうまくやれないか」と思い悩み、ときには考えすぎ、自分を責めたりしてしまいがちです。しかし著者は、以下のような主張を投げかけているのです。
人づきあいはテキトーでいいのよ! むしろ、一切考えなくてもいいの!(「はじめに――人づきあいはテキトーでいいのよ」より)
精神科医として活動するなか、いちばん多く投げかけられるのが人づきあいの悩みなのだといいます。つまり、人づきあいで悩むのは仕方がないことでもあるわけです。しかし著者はそうした現実を踏まえたうえで、「人生は考え方次第で変わる」と思っているそう。
人生のよし悪しは主観で決まるものなのだから、人間関係はテキトーでもいい。むしろ、テキトーがいいというのです。ちなみに、ここでいう「テキトー」とは「いいかげんにする」という意味ではなく、「気にしない」ということ。
もちろんそれは、仕事の場においても同じ。そこできょうは第5章「仕事上のつきあい」に焦点を当ててみましょう。
仕事を断れずに引き受けすぎてしまう
頼まれた仕事はなかなか断りづらいもの。会社や上司からの評価が気になるからと、無理をしてでも引き受けてしまうというケースは珍しくありません。また、突然に頼まれることも多いため、もともと抱えている仕事がある状況下ではOKするしかなく、のちのち困ることもあるでしょう。
この状況を一番うまく切り抜けるために、「ペンディング法」をおすすめするわ。つまり、いったん答えを保留し、引き受けられるかどうかを検討して、OKなら後で返事をする方法よ。つまり、時間稼ぎをしている間に冷静に考えるだけのことね。(137ページより)
たとえば「はい、わかりました。スケジュールを確認して本日中にご返事しますね」と答えれば、断るのが苦手な人でも伝えやすいのではないでしょうか。そののち状況を確認し、対応できそうなら、「先ほどの件、すぐにご返事できず申し訳ありませんでした。ぜひ引き受けさせてください」と伝えたとしたら、少し返事が遅れたとしても悪い印象は持たれないですみそうです。
断りたい場合は、「じつはプロジェクトを3つ抱えていて、明日の会議の進行も私が担当することになっています。先ほどの件もぜひ担当したいのですが、難しい状況です。たいへん申し訳ございません」と、ある程度事情を伝えながら断れば、相手も受け入れやすくなるはず。
また、仕事の評価は、最後の印象が大切よ。キャパオーバーの仕事を無理に引き受けるより、仕事量をコントロールしていい結果を出したほうがアナタの評価は上がるもの。その場合、最初に他の仕事を断った「過程」はあまり印象に残らないはずよ。(138ページより)
ただし「ペンディング法」を用いる際には、保留するときに返事の期限を必ずつけることが重要。「いつまでに返事できるか」を聞かれる前に、自分から期限を設定することが大切だということです。しかもその期限は早いほうがいいそう。なぜなら、「まじめに向き合っている」ことがきちんと相手に伝わるからです。
もう一つやっておくべきことがあるわ。それは、今やっている仕事を普段からきちんとスケジューリングすること。やらなければいけないことを全部洗い出して、一日当たりどれぐらい進めるのかをしっかり決めておく。これは具体的であればあるほどいいのよ。理想は、一日でやることを箇条書きで示せている状態ね。(139ページより)
そうしておけば、「きょうやるべきこと」がつねに頭のなかにある状態でいられるわけです。(136ページより)
プライベートに踏み込まれる
どのような場所にも、プライベートにずかずかと踏み込んでくる人がいます。そんなときのために、著者はここで“プライベートに踏み込まれたときに有効なテクニック”を明かしています。これは、仕事以外の場でも応用できるものだそう。
まずは、「言ってもいいこと」と「絶対に言いたくないこと」を分けること。
本来は何も言う必要はないけれど、詮索好きな「めんどい人」は、全部秘密にされるとよけいに詮索したがるのよね。なので、少しは情報開示したほうがいいの。そこで言ってもいいこと、絶対に言いたくないことを、あらかじめ決めておくのよ。アテクシの場合、年齢や結婚については言ってもいいけれど、仕事については言いたくないわ。(141ページより)
もし、いってもいいことを聞かれた場合は、さらりと答えることがポイント。そうすれば会話があまり広がらないので、すぐ終わるわけです。もったいぶると、相手の関心がかえって強くなるので注意が必要。
「言いたくないことは、ぼやかして伝える」のも有効よ。たとえば、仕事なら「自営です」「〇〇関係です」なんて答えるの。すると相手は「あまり聞かれたくない話なんだな」と察してくれることもあるし、このまま引き下がってくれるかもしれないわ。
ただ、これでも「お仕事は、お医者さん?」などと食い下がってくる人もいるのよね(しかも、当たっていることも)。この場合は、「そんな感じかもしれませんね」などとさらにぼやかしてみて。のらりくらりと答えていれば、相手もめんどうになってくるはずです。(142ページより)
それでもいろいろ詮索してくる場合の最終手段にして最強の答え方は、「ヒミツです」。
これに尽きるそうです。それでもなお食い下がってきても、「ヒミツといったら、ヒミツです」と答え、いいたくないことはいわないでおけばいいのです。とはいえ無愛想に答えるのではなく、笑顔でいることも大切だといいます。(140ページより)
人づきあいをテキトーに考えれば、大きな視野で状況を見られるようになると著者はいいます。だからこそ本書を参考にしながら、具体的にどう「テキトー」にするのかを確認しておきたいところです。
Source: 日本実業出版社