「起業したい」と会社を辞める前に必ず踏んでおきたいステップは?

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起業0年目の教科書

『起業0年目の教科書』

著者
倉林 寛幸 [著]
出版社
かんき出版
ジャンル
社会科学/社会科学総記
ISBN
9784761277574
発売日
2024/09/19
価格
1,650円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

【毎日書評】「起業したい」と会社を辞める前に必ず踏んでおきたいステップは?

[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)

華やかに活躍する起業家の姿を目にすると、「自分もやりたい」「できるかも」と気持ちを刺激させられるかもしれません。『起業0年目の教科書』(倉林寛幸 著、かんき出版)の著者によれば、そんなときこそ「起業0年目」の始まり。

ただし、“すべてが華やかで、嫌な仕事は一切せず、ノー残業で人間関係に煩わされることもない優雅な暮らし”を夢見て「すぐに起業したい」とテンションが上がっているのであれば、ちょっと冷静になるべきでもあるようです。著者自身も、そんな妄想をしながら起業した結果、地獄のような苦しみを味わったというのです。

起業1年目にビギナーズラックで2000万円を稼げたために舞い上がっていたものの、2年目に取引先とトラブルを起こして一気にどん底へ。冷静な判断ができなくなり、高額の自己啓発セミナーや怪しい儲け話に引っかかって借金を負うなどの苦難に直面したのだとか。

いまでこそ立てなおすことができたようですが、その原因は、起業0年目になんの準備もしないまま起業したことにあったと感じているそうなのです。

起業0年目にもっと下地を整えておけば、激しいアップダウンはなく、ゆるやかに右肩上がりになる起業家人生を歩めたかもしれません。

皆さんには、ぜひこの本を読んでいただいて、私がどん底の5年間で味わった苦労と時間をショートカットしていただきたいのです。

本書のノウハウを実践すれば、大成功はしないかもしれませんが、大失敗はしないと思います。今は円安や値上げラッシュなど世の中の状況が不安定なので、大失敗しないことが何より大事ではないでしょうか。(「まえがき」より)

たしかにそのとおり。起業するとなると大成功を夢見がちですが、本当に大切なのは失敗しないことなのです。そんな考え方に基づく本書のなかから、きょうは第1章「起業したいと思ったら」に焦点を当ててみたいと思います。

起業で成功する人は、起業0年目から二足の草鞋を履いている

もしもいま、なんの準備もせずに「会社を辞めて起業しよう」と考えているのであれば、それは燃え盛る火のなかに自ら飛び込むようなもの。著者はそう表現しています。一昔前までは、そうした覚悟が必要だったのかもしれません。しかしいまはそれではリスクが大きすぎるということです。

では、どうすればいいのでしょうか?

今は時代が変わり、さまざまなツールがあります。そのツールを活かした一つの手段が副業です。

まずは会社に勤めながら、副業で「お試し起業」をしてみる

副業で手ごたえを感じたら、退職して本格的に起業する。

この順番を守れば、起業で成功する確率がグンと上がります。

(20ページより)

著者自身も、会社員時代から副業をしていたそう。つまりはそうした経験に基づき、「どれだけ“会社をいますぐ辞めてもやっていける”という自信があったとしても、まずは二足の草鞋を履くことからスタートしたほうがいい」と主張しているのです。

なかには勢いで会社を辞め、そのあとで「どんなビジネスをするか」と考えて、最終的に成功する人もいるかもしれません。しかし、それは例外と考えるべき。うまくいかなかった結果、お金がどんどんなくなっていく生活は、メンタル面で想像以上につらいものだからです。

資金が底をつき、アルバイトをしながら食いつなぐのも珍しい話ではないようです。それでも逃げ道が残っていれば傷は浅くて済むでしょうが、退路がなかった場合、そこから社会に復帰するまでには時間がかかるもの。しかも精神的なダメージも大きいだけに、退路を断つのは最後の手段にすべきだということです。

くれぐれも、「会社が嫌だから」「人間関係がうまくいっていないから」といった理由で、勢いで辞めてしまわないように。

私自身も、それが企業の動機であっても、そこから数年間は会社員を続けました。(23ページより)

いいかえれば、会社員が嫌になったなら、それは“会社のやめどき”ではなく、“企業の準備の始めどき”だということです。(20ページより)

起業で成功する人は、簡単に稼げる話には飛びつかない

前述のとおり、創業当初は順調だった著者はそののち苦境に陥ったことがあるそうです。そして、そんな時期に怪しげな儲け話に引っかかってしまったのだといいます。

なにをやってもうまくいかず、貯金も底をつき、自信をなくしている状態だと、正常な判断ができなくなるもの。そしてそんな時期には、怪しい話に乗ってしまいやすくもあります。

著者の場合は、そのころ通っていた自己啓発セミナーの受講生仲間から、「簡単に儲かるビジネスがあるよ」と声をかけられたそう。それは携帯キャリアが実質0円で提供するiPhoneを中国に転売するというものだったといいます。

ところが当然ながらうまくいかず、残ったのは800万円程度の借金。しかし払えるはずもなく、最終的には月に数万円ずつ返済していくことでなんとか乗り越えたのだといいます。

自分の経験から声を大にして言いたいのは、「世の中には簡単に稼げるビジネスなどない」ということです。

起業で大きな失敗をする人には「一攫千金マインド」という共通点があります。ラクをしてお金を稼ぎたいマインドが強すぎるので、おいしい話が来るとチャンスだと思い、乗っかってしまうのです。(26ページより)

しかし、ネットによくある「人生の成功者になれる」「すぐに月100万円稼げる」などと謳ったセミナーやビジネスの広告は、十中八九、怪しげなもの。お金に困っていると心を揺さぶられるかもしれませんが、そうした話に大金を注ぎ込んでしまうと、起業自体が難しくなるわけです。

「自分はそんなのには引っかからない」と思っていても、信頼していた知り合いに話を持ち掛けられたら、「これなら安全だろう」とバイアスがかかることもあり得ます(私のように)。

だから、地道にコツコツ稼ぐのが一番安全で確実なビジネスだと思ってください。(24ページより)

3年くらいは下積みでやるつもりでいると、お客様からも信頼され、徐々に仕事は増えていくそうです。世の中にはおいしい話などないのですから、とにかく地道に進めるべきだということです。

起業0年目の最初の一歩は、大きく踏み出すことではないと著者はいいます。小さくても正しい方向に向かって、たしかな一歩を踏み出すことこそが重要なのだと。だからこそ起業したいのであれば、本書を参考にしながら、自分にできることを再確認してみるべきかもしれません。

Source: かんき出版

メディアジーン lifehacker
2024年10月7日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

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