『明けても暮れても食べて食べて』
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“食べ物まみれ”の家族の日常を描く 旨味ぎっしりのイラストエッセイ
[レビュアー] 夢眠ねむ(書店店主/元でんぱ組.incメンバー)
私の経営している夢眠書店では食べ物の絵本が棚のほとんどを占めているのだが、その中でも夫婦ユニット「はらぺこめがね」の作品は棚のひとブロックを丸々使うほど取り揃えている。彼らの絵本の特徴はなんといっても「美味しそう」なこと!妻のかおりさんがキャラクターやお皿を描いていて、夫のしんやさんがそこに盛り付けるように食べ物の絵を描く。絵にはモデルがあって、自分で作った料理やどこかで食べたものが描かれているのだ。
そんな彼らの初めての“絵本じゃない”本は、写真は一枚もないのに、旨味ぎっしりに表現された絵で、軽快な文章で、どう美味しかったのかが手に(舌に?)とるようにわかる。どれも面白いのだが、ショートケーキのイチゴを避けて食べたり、焼きそばパンの焼きそばを先にお箸で食べちゃう、自由に食を楽しむ娘さんへの眼差しが印象的である。
大人の目線で読むと微笑ましいのだけれど、待てよ、自分も小さい時にヘンテコな食べ方をしていた。肉まんの“まん”部分は包装だと思っていたので剥がして先に食べ、後から“肉”部分をゆっくり味わったり、すき焼きの時は絶対卵かけご飯にお肉を乗せると決めていたり。父はそんな私を見ながら「その食べ方、うまそうやなぁ」と笑っていたな。そんな父こそ、あんぱんをストーブであっためて冷たい牛乳と合わせるのが大好物でこそこそ作っていたり、「お母さんには内緒やぞ」とかまぼこを板のまま歯で削って食べたり、スライスハムを重ねたまま齧ったり色んな秘密の食べ方を伝授してくれた。読みながら、そんな家族の時間をじわりと思い出す。
元々、かおりさんは食べることが嫌いだったのに、しんやさんの影響で食に興味が出たという話も衝撃的! 同じように食があまり進まない人がこの本を読んだら、つられて「食べてみたいかも」ってならないかしら。