『歪んだ幸せを求める人たち』
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心の「歪み」が呼ぶ不幸
[レビュアー] 佐藤健太郎(サイエンスライター)
傍目からは理解しがたいような理由で、簡単に犯罪行為を犯す非行少年たち。その背景にあるのは、彼らの心の「認知の歪み」である――。このことを指摘した、宮口幸治『ケーキの切れない非行少年たち』は社会に大きな衝撃を与え、大ベストセラーとなった。
『歪んだ幸せを求める人たち ケーキの切れない非行少年たち3』は、サブタイトルが示す通り同著のシリーズ第3弾に当たる。今回の対象は非行少年だけではなく、歪んだ認知を持つ人々全てだ。
どうでもいいことで異常に怒り出す人、ネットで有名人に陰湿な嫌がらせを行う人などなど、なぜこんなことをするのだろうと思う人は日常でも数多く見かける。しかし彼らとて、何も理由もなくこうした行動に走っているわけではない。実のところ、彼らも皆と同じように「幸せになりたい」と思っているだけではないのか。ただ彼らの「幸せ」の捉え方に歪みがあるために、かえって不幸を呼んでしまっているのではないのか、というのが本書における著者の主張だ。
自殺を考えたものの、大好きな祖母が悲しまないよう、先に祖母を殺そうとした少年といった信じがたいような例から、「ちょっと濡れそうだから」程度の理由で傘を盗んでしまう者まで、確かにそこには判断や所有欲の歪みが伏在している。
他人の、そして自分の心の歪みにどう対処すべきか。人間関係に新たな視点をもたらしてくれる一冊だ。