『水と清潔 風呂・トイレ・水道の比較文化史』福田眞人著

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水と清潔

『水と清潔』

著者
福田眞人 [著]
出版社
朝日新聞出版
ジャンル
歴史・地理/日本歴史
ISBN
9784022631343
発売日
2024/08/09
価格
1,870円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

『水と清潔 風呂・トイレ・水道の比較文化史』福田眞人著

[レビュアー] 東畑開人(臨床心理士)

 人間が生きていくうえで絶対的に不可欠なものとは何か。金だろうか、愛だろうか。人間が人間らしく生きるためには何があればいいのか。名誉だろうか、友だろうか。いずれも違う。水だ。本書は教えてくれる。水こそが生存の基盤であり、人間性の源である。

 一日の流れを思い出してほしい。あなたの生活は水まみれのはずだ。水を飲み、水を排出する。人間はジョウロのように、水を出し入れし続けないと死んでしまう。同時に、私たちは水を沸かして料理をし、汚れたものを水で流す。水がなくなれば人間的な暮らしができなくなるだろう。

 そういうことを人類は遥(はる)か昔から延々とやってきた。そのために水を貯(た)める施設を作り、水を運ぶ技術を開発した。そして、水に神々の力を見(み)出(いだ)した。本書はインドの聖なる川に始まり、森鴎外の風呂に至る旅路の中で、人間と水との関わりのすべてを描こうとしている。

 この本を読むと、蛇口をひねるだけで水が出る生活が、どれだけ変態的で、偉大であるのかがわかる。そして、これからの人類が心配になる。(朝日選書、1870円)

読売新聞
2024年10月11日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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