『ドイツ人のすごい働き方 日本の3倍休んで成果は1.5倍の秘密』
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【毎日書評】短時間でよい結果を出すためのドイツ流「早起き習慣」
[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)
『ドイツ人のすごい働き方 日本の3倍休んで成果は1.5倍の秘密』(西村栄基 著、すばる舎)の著者は、日本企業の海外駐在員としてドイツで勤務しているという現役の会社員。2つの会社で培ってきた駐在歴は計17年で、欧州向けビジネスに携わってからは30年になるそうです。
ちなみに前職の半導体メーカーに就職した1990年代前半は、早朝から深夜まで働いても毎日残業続きだったそう。成果に見合ったフィードバックも得られず、やりがいを見失いかけていたのだといいます。そんななか、28歳でドイツ支社の職場に足を運び、ドイツ人たちの働き方を見て大きな衝撃を受けたのだとか。
・朝早くに働き始め、夕方には颯爽と仕事を終える
・就業間際には一斉にデスクを片付け始め、17時にはオフィスから人が消える
・デスクの上は毎日、新品のように整理整頓されている
・年間約30日間の有給休暇をフル取得
・2〜3週間の長期休暇も当たり前、にもかかわらず仕事は回る
(「はじめに」より)
早く帰ったり休んだりしているのに、顧客の厳しい要求にも納期通りに対応し、日本よりも高い給与水準を実現していたというのです。
その姿を見たときから著者は、「ドイツ人の働き方」研究を開始したそう。本書ではそこで得た知見に基づき、“日本の職場のよさを活かしつつ、ドイツの要素を無理なく取り入れる”アイデアを提案しているわけです。
それはつまり、単にドイツを模倣するだけではなく、日本の職場環境や人間関係に合わせてアレンジした働き方。日本とドイツの「いいとこ取り」のハイブリッド型であるようです。
きょうは第2章「無理せず成果が出る『ドイツ式働き方』のなかから、「ドイツ流『早起き習慣』を身につける3つのコツ」に注目してみたいと思います。
15分早起きチャレンジ
著者によれば、たいていのドイツ人は朝が早いそうです。とはいえ、急にそれを真似て5時に起きようとしても、なかなかうまくいかないはず。体内時計は、日本のライフスタイルに合わせてインプットされているからです。
大切なのは、いきなり起床時間を早めるのではなく、徐々に変えていくこと。
具体的には、これまであなたが朝7時に起きていたとしたら、1週間に15分ずつ、徐々に起床時間を早めていくのです。つまり最初の週は、アラームを6時45分に設定します。
ささやかな一歩ですが、この小さな変化が、習慣をつける第一歩になるのです。(95〜96ページより)
たった15分でも早起きできれば、朝の忙しい時間帯に15分のゆとりがあることのありがたさを実感できるはず。したがって、ますます早起きしたくなり、習慣化へのモチベーションが高まるというわけです。
とはいえ健康を害しては元も子もないので、起床時刻を早めた場合は就寝時刻を調整する必要もあるでしょう。著者のドイツ人の同僚たちは、朝にはいつも爽やかに挨拶してくれるそうですが、それも無理せず早起き習慣を実践している証なのかもしれません。(95ページより)
14時以降のカフェインカット
ご存知のとおりカフェインは、眠気覚ましや集中力アップの強い味方。しかし早起きを習慣にしたいのであれば、摂取する時間に気を配る必要があるといいます。
摂る時間によっては入眠が難しくなったり、睡眠の質を悪化させてしまったりする可能性があるからです。
一般に、カフェインは摂取から約5〜6時間の半減期(効いている時間)を持つとされます。体質の差も考慮し、就寝への影響を排除したいなら、ベッドに入る8時間前からはカフェインの摂取を控えたいところです。
つまり、8時間睡眠を前提とすれば、朝6時に起床するためには、前日の22時には就寝する必要があります。そこから、カフェインの影響が否定できない8時間を逆算すると、カフェイン摂取は14時までにすべき、ということがわかります。(97ページより)
事実、ドイツのオフィスでカフェスペースに集まっていたドイツ人の同僚たちも、おもに午前中からお昼にかけてコーヒーを飲んでいたと著者は明かしています。
ランチ後のエスプレッソを飲んだら、あとは水やノンカフェインのハーブティーに切り替える人が大半だったというのです。(97ページより)
起床後ルーティンの自動化
早起きが習慣になってきたとしたら、それを長続きさせる必要が生じてきます。そのための秘訣は、「朝起きてからやること」を明確にしておくこと。
著者も基本的には朝型の生活を実践できているようですが、起床後の行動が決まっていないときは、ベッドから起きるのが億劫になるといいます。
そんなときに役立つのが、「起床後ルーティンの自動化」です。
朝起きたら「ベッドを整える」「熱いシャワーを浴びる」「運動する」「読書する」「瞑想する」といったルーティンをあらかじめ組んでおくのです。そうすると、目覚めたと同時に「まずは何をしようか……」と考えることなく、体が勝手に動くようになります。
自分に考える時間を与えないというのがポイントです。(98ページより)
また、「走る」「勉強する」といった行動目標ではなく、中長期的な目標をセットしておくことも有効であるようです。たとえば「ダイエットで○キロ痩せる(ために走る)」「TOEICの点数を〇点にする(ために勉強する)」など。
たとえばマラソンが趣味だという著者の場合、出場したいマラソン大会にエントリーし、目標タイムを決めると急にスイッチが入るそうです。
まず大会の日付から逆算して、毎月〇キロ走る、という中長期的な目標を定めます。それを達成するためには毎朝□キロ走る必要があって、そのためには△時に起きなければ……と毎日のルーティンに説得力を持たせていくのです。(99ページより)
そうすれば、自分から言い訳を考える時間を奪うことができるというわけです。そんな些細なことも、ドイツ人のような働き方を身につけるためには必要なのかもしれません。(98ページより)
仕事の効率を上げることができれば生産性は高まり、生産性が高まればサッと帰宅できるようになることでしょう。すると自分の時間が増えるため、さまざまなことに挑戦する意欲がわき、可能性が開けていくはず。未来をよりよいものにするために、本書で明らかにされているワークスタイルを取り入れてみてはいかがでしょうか。
Source: すばる舎