「かくれ繊細さん」が必要以上に仕事で疲れてしまう2つのパターン

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かくれ繊細さんのめんどくさい疲れを手放す本

『かくれ繊細さんのめんどくさい疲れを手放す本』

著者
時田ひさ子 [著]
出版社
清流出版
ジャンル
社会科学/社会科学総記
ISBN
9784860295653
発売日
2024/07/17
価格
1,650円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

【毎日書評】「かくれ繊細さん」が必要以上に仕事で疲れてしまう2つのパターン

[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)

いまの日本では、疲れていない人なんていないのではないか――。『かくれ繊細さんのめんどくさい疲れを手放す本』(時田ひさ子 著、清流出版)の著者はそう指摘しています。

たしかに労働環境や人間関係、お金の不安など、ストレスにつながる要因はいくらでも思いつくことができます。しかも、それらを乗り越えながら日々を送っていたとしても、達成感はなく、疲れだけがたまっていくかもしれません。

なお、そうした疲れを抱える人のなかには、「好奇心が強いにもかかわらず怖がりである」「没頭しやすいけれど長続きしない」というような相反する性格特性を持つ方が多いのだそうです。そして、もし心当たりがあるのであれば、「かくれ繊細さん」(HSS型HSP、あるいはHSE)の可能性があるのだとか。

これは、アメリカの心理学者のエレイン・アーロン博士の発見した概念「HSP:Highly Sensitive Person」(生まれつき感受性が強く敏感な気質をもった人)から知られるようになりました。

この「HSP」の中でも「かくれ繊細さん」とは、共感能力が高く繊細で傷つきやすい側面(HPS)を、外向性、社交性、積極性、好奇心旺盛さという別の側面(HSS:High Sensation Seeking、またはHSE:Highly Sensitive Extrovert=外向的なHSPという意味。HSS型HSPとほぼ重複しています。

エレイン・アーロン博士2018年ブログ“Introversion, Extroversion and the Highly Sensitive Person”)により表面化しないようカバーしている人たちです。(「はじめに」より)

HSS型HSPを表すために、「アクセルとブレーキを同時に踏みながら生きている」という表現がよく用いられるそう。つまり両方を同時に踏んでいるせいで余計な力を使いすぎてしまい、疲れやすいというわけです。

そこで本書において著者は、疲れを手放し、疲れに悩まされることなく生きていくための術を明らかにしているのです。きょうは第4章「仕事に疲れる」のなかから、2つのポイントを抜き出してみたいと思います。

仕事を任されるとうれしい反面、引き受けすぎて疲れる

かくれ繊細さんが仕事で頼られやすいのは、先見性があったり、意欲的だったり、みんなが苦手だと思うことを引き受けてくれたりするからだといいます。

かくれ繊細さんは、先々のことを見通して予測しながら物事を見ている上に、新しい刺激がほしい人たちです。

上長からすると、やったことがないことを「めんどくさい」と感じるのではなく、「新しいことにチャレンジできるのがうれしい」と目を輝かせる人がいたら、その人に任せたくなるものです。(146ページより)

そのため、かくれ繊細さんは仕事を任されやすいということのようです。とはいえ、頼られて仕事が増え続ければ、やがてキャパオーバーになってしまいます。そこで著者はすすめているのは、次の2点。

1.引き受けすぎない

引き受けてしまうのは、「自分が頑張ればどうにかなる」という作業工数やエネルギー量の見積りの甘さが原因です。(149ページより)

たとえば、仕事をそれ以上引き受けないほうがよさそうだと思ったときのためのセリフを用意しておくといいそうです。「〇〇ごろならできるかもしれないので、そのときに困っていたらまた聞いてくださいますか?」というように。

2.人に仕事を振り分ける

かくれ繊細さんは、人に仕事を振り分けるスキルが必須です。(150ページより)

人に振り分けるのが苦手なら、「いやだったら断っていいですよ」と前振りをしてからお願いするとか、仕事の全体層を伝えてから「この部分だけやってもらえたら助かるんだけど」と相談してみるなど、“伝え方の工夫”をすることが大切であるようです。(146ページより)

仕事の失敗がかなり尾を引く

仕事でミスをしたり、そのせいで周囲に迷惑をかけてしまうようなことは誰にでもあるもの。しかし、かくれ繊細さんの場合、「自分のせいで起きたミス」を自分のなかでどんどん大きくさせてしまい、あたかも「取り返しがつかないミス」であるかのように感じて罪悪感や恥ずかしさに押しつぶされそうになったりするそう。

しかも、本人が「ミスをした際に感じる罪悪感の大きさ」と、「周囲がそのミスについて感じる認識」とのギャップはかなり大きいようです。かくれ繊細さんが自分のミスを取り返しがつかないもののように感じている一方、周囲の人たちは「日常的に起こること」だとしか感じていないということ。いかにも、ありそうな話ではないでしょうか。

なお、その原因は、かくれ繊細さんが否定的な感情に敏感であるためだと考えられるそうです。ミスをしたときに大きな罪悪感を感じてしまうかくれ繊細さんが、仕事でミスをしたとしたら、否定的な感情とショックの連鎖が起こってしまう。そのため、仕事での失敗経験を引きずってしまうわけです。

かくれ繊細さんはミスに弱いからこそ、ミスをした時、その焦りや混乱が外にこぼれないようにすごく気を付けてもいるのです。

そして、内心の焦りと、外側のポーカーフェイスのギャップは肉体的にも精神的にもきつくて耐えがたいので、「もう二度とミスをしないようにする」と、覚悟を決めます。

ミスを絶対に回避したいので、慎重に仕事をするように気を付けますし、極端すぎるくらいの完璧主義に偏っていくこともあると思います。(155ページより)

つまり本当は完璧主義だというわけではなく、ミスを回避するために「完璧にしなければならなくなっている」ということ。肩に力を入れ、「ミスをしないように気を張っている」からこそ、人の何倍も疲れてしまうのです。では、どうすればいいのでしょうか?

かくれ繊細さんはミスに対して深刻になりすぎてしまうので、そこから気持ちを切り離すための、気楽に使える切り替える方法を知っておくといいです。

もしミスしないように肩に力が入ってしまっていたら、「ああ、ミスしないように気を付けてるんだなー、自分」と客観的な視点をもつようにしてみてください。(156ページより)

ただし、「ミスをしてもいいんだよ」という励まし的なことばを自分にかけるのは、かくれ繊細さんにはあまり向かないそう。励ますのは“ほどほど”がよいということです。(151ページより)

かくれ繊細さんの多くは最初、「自分は繊細ではない」と思っているものだといいます。社交的、外交的で明るく、物事を気にしない人だと思われやすければ、たしかに自覚する機会はないかもしれません。しかし、あとから徐々にHSP特性に思い当たっていくものでもあるだけに、本書を通じて知識を蓄えておくべきではないでしょうか。

Source: 清流出版

メディアジーン lifehacker
2024年10月15日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

メディアジーン

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