いまマネジメント現場に求められるのは「言語化」スキルの高いリーダーである

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リーダーの言語化

『リーダーの言語化』

著者
木暮太一 [著]
出版社
ダイヤモンド社
ジャンル
社会科学/社会科学総記
ISBN
9784478120286
発売日
2024/10/03
価格
1,760円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

【毎日書評】いまマネジメント現場に求められるのは「言語化」スキルの高いリーダーである

これまでのビジネス環境においては、「体で覚えろ。仕事とはそういうものだ」というリーダーの主張がまかり通っていた部分があるのではないでしょうか。消費者ニーズも比較的シンプルであり、スペックが高いものをつくりさえすれば選んでもらえた時代もあったはずです。

しかし、状況は大きく変わったのだと、『リーダーの言語化 「あいまいな思考」を「伝わる言葉」にする方法』(木暮太一 著、ダイヤモンド社)の著者は主張しています。「正解がない時代になった」ともいわれるけれど、自分の「正解」を伝えることができれば、それはチャンスになるのだとも。

リーダーが自分の頭の中を明確に伝えられるようになれば、そして相手と共通の指針を持ち、同じ尺度で議論できるようになれば、自分たちが思う正解に向けてチームがまとまっていきます。

個人としても、自分が思う正解を明確に伝え、それを明確に相手に伝えられたら、精神的なストレスは大幅に軽減されていくはずです。(「はじめに」より)

いまの日本で多くの人が幸福感を抱けないのは、お互いの正解がぶつかり合っているからではないか。そう分析しているのです。

すべてのビジネスパーソンが、自分がしていることの価値(提供価値)と、自分が存在しているビジネス的価値(介在価値)を言葉で実感できる社会を目指す。これが、ぼくが長年掲げている仕事の世界観です。

そして、ぼくらの頭の中を言語化することで、それが実現できると信じています。特に組織の要であるリーダーの言葉を変えることで、組織も社会も大きく変えられると感じています。(「はじめに」より)

しかし、そもそも「言語化」とはなんなのでしょうか? 基本的な疑問を解消するために、序章「リーダーの課題は、言語化できれば9割解決する」を確認してみましょう。

言語化とは「明確化」である

「言語化が大事」というような言説をよく聞きますが、「言語化」とはなんなのでしょうか?

この問いに対して著者は、言語化とは「明確化」だと述べています。ことばにすれば「言語化できた」となるわけではなく、言語化できたかどうかは、「明確にできたかどうか」だということです。

ですから、うまい表現をすることが言語化ではありませんし、何かを売るための言葉を作ることが言語化なわけでもありません。自分が考えていることを明確にできていれば、仮にそれが言葉ではなくて図形だったとしても、数字だったとしても「言語化できている」のです。(27ページより)

日本語は曖昧さを残したまま交わされる言語であり、曖昧さが好まれる側面もあります。明確にしすぎると「きつい」というようなネガティブな印象を持たれてしまう可能性も否定できませんし、曖昧さにもメリットはあるでしょう。

しかし、曖昧にしか表現できないとしたら、デメリットも小さくはないはず。だからこそ、曖昧にも、明確にも伝えられるほうがいいと著者は考えているようです。(25ページより)

リーダーが言語化する目的

言語化とは明確化です。特にビジネスでのコミュニケーションは明確さが重要です。あいまいな表現をして「あとは自分で考えて察して」では、伝えたことになりません。

しかし現状、ぼくらの普段の会話はかなり「あいまい」です。主語述語が抜けているというレベルから、「いい感じにお願い」など、本人は指示しているつもりでもあいまいなものもあります。(28〜29ページより)

たしかにそうではないでしょうか。しかし会話だけではなく、私たちの思考自体がかなり曖昧なのだと著者は指摘しています。なるほど、「会社をよくしたい」「風通しがいい会社を目指す」「仕事を通じて自己実現したい」などというフレーズを耳にする機会は少なくありませんが、よくよく考えてみると、なにを示しているのかが不明瞭です。

方向性はなんとなくわかるものの、具体性に欠けているわけです。つまり、そこを改善する必要があるということです。

リーダーが言語化をする目的は「リーダー自身の思考(頭の中)を明確にすること」、そして「メンバーへの依頼や指示を明確にすること」です。

そして明確に伝える目的は、「メンバーから正しい行動を引き出すこと」に尽きます。(29ページより)

ビジネスシーンでものごとを明確にする目的は、各人が考えていることを明確にし、お互いがすべきことを明確化すること。ただし、ことばを明確にしたとしても、“すべきこと”がわからなかったら意味がありません。

とくに重要なポイントは、リーダーの役割がマネジメントであること。いうまでもなくマネジメントとは、組織の目標を達成させるためにチームメンバーを動かすことにほかなりません。

たとえば話がうまかったり、接し方がソフトだったり、相手の頭のなかに残るフレーズをつくれたりすれば、なんとなく魅力的であるように思えるかもしれません。しかし、リーダーに求められる言語化とはそういうものではないと著者は断言しています。

うまい言い回しをすることが目的ではなく、相手の頭のなかに残りさえすればなんでもいいというわけではないのだと。

リーダーにとって必要な言語化とは、単なる人心掌握ではありません。「メンバーに適切に動いてもらうこと」なのです。(30ページより)

当然ながら人は簡単に育つものではなく、育てるためには相応の時間が必要となります。とはいえ、やるべきことを明確にしないのでは無意味。「俺の背中を見て学べ」ではなく、明確に指示を出し、ことばで伝えなければならないわけです。

つまりリーダーが言語化し、思考とアクションを明確にできたら、組織は多くの課題を解決できるようになっていくということです。(28ページより)

言語化はあらゆるビジネス、あらゆる会話に欠かせない要素だと著者は述べています。とくにリーダーの方々は、ビジネス的にもメンタル面にもさらに成長すべく、本書を参考にすべきかもしれません。

Source: ダイヤモンド社

メディアジーン lifehacker
2024年10月16日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

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