『帰ってきたコンペイトウ Kurihara and Iriyama Toy Bottle Collection』
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『帰ってきたコンペイトウ』栗原英次/入山喜良著
[レビュアー] 清水唯一朗(政治学者・慶応大教授)
ピンク、緑、黄、紫、白。カラフルで、はなやかで、見ているだけで楽しくなるコンペイトウ。そういえば「カワイイ」を看板に起業した学生も、世界中の空港にコンペイトウ屋をつくりたいと言っていた。
もっとも、本書の主役はあのかわいらしいつぶつぶではなく、その外側の瓶、いや、壜(びん)だ。中身に負けない華やかさに惹(ひ)きつけられた二人の少年は長じて収集に没頭し、それはすてきなビンおじいさんになった。
250ページほどの本に、実に500を超える二人のコレクションが並ぶ。そのどれもが愛(いと)おしくなるまでの魅力にあふれている。素敵な人生そのものだ。
それにしても、壜がこれほどまで時代を表すとは、驚いた。電灯、機関車、電車、飛行機、バス、ピストル、爆弾、軍刀に東郷元帥。カメラ、グローブ、バットから自動車まで。最後の壜職人によれば、コンペイトウがよく売れたのは昭和26年頃だという。子どもたちの憧れは社会を見事に映している。
どんな顔で食べていたのだろう。今ならどんな壜が作られるのだろう。今昔の壜に詰められたコンペイトウが並ぶお店があったら、間違いなく吸い込まれてしまう。(立東舎、2475円)