『選挙との対話』荻上チキ編著

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選挙との対話

『選挙との対話』

著者
荻上 チキ [著、編集]/社会調査支援機構チキラボ [監修]/飯田 健 [著]/菅原 琢 [著]/秦 正樹 [著]/田中 東子 [著]/岸本 聡子 [著]/大村 華子 [著]/永井 玲衣 [著]
出版社
青弓社
ジャンル
社会科学/社会
ISBN
9784787235466
発売日
2024/10/07
価格
1,980円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

『選挙との対話』荻上チキ編著

[レビュアー] 清水唯一朗(政治学者・慶応大教授)

読み聞き話し 政治知る

 3年ぶりに総選挙がやってきた。与野党双方で党首の交代があり、争点も多く、関心も高まっている。

 もっとも、選挙にどう向きあえばよいのかわからないという声も多い。職業柄、知人からも、学生からも、どうしたらよいかとしばしば尋ねられる。

 そうだろうと思う。それでいいと思う。政権が変わり、ところによっては選挙区も変わり、国内外の情勢も落ち着かない。少し立ち止まって考える時だろう。

 さりながら、一人で考えるのはなかなか骨が折れる。かといってSNSを見ると、目を覆いたくなるような言葉があふれている。やれやれ。

 どうしたらよいのだろう。本書はそのためのヒントを三つ示してくれる。

 選挙を知るための地図があれば、少し安心できる。そのためには今の選挙がどうなっているのか、その仕組みと現状を知りたい。一つ目のヒントは専門家の分析を読んで、概要をつかむこと。

 投票に行くには、候補者が何を考えているかを知りたい。二つ目のヒントは政治家の考えを聞いてみること。

 わけてもわからないのは、実は私たち自身の考えだ。三つ目のヒントは、政治や選挙への疑問や印象をぶつけ合う、私たちのあいだでの対話、そのススメだ。

 読んで、聞いて、話す。本書は本だからどれも「読む」のだけれど、いやいや、これは本を離れてできることだ(と本書は教えてくれているはずだ)。

 専門家の解説はそこここにある。J―STAGEというウェブサイトにいけば学術誌の論文も読める。選挙事務所はどこも来客歓迎、候補者がどこにいるかを示すサイトもあるという(すごい時代ですね)。家庭でも、職場でも、飲み会でも、普段なら「政治?」といわれそうな場でも、選挙のときなら盛り上がれる。

 政治は私たちの日常のなかにある。その基本は話す、聞くからはじまるコミュニケーションにある。そうだった。

 投票日まであと1週間。本書を片手に、選挙のまちなかに一歩踏み出してみるのはなかなか面白そうだ。(青弓社、1980円)

読売新聞
2024年10月25日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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