『オスの本懐』
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『オスの本懐』和田秀樹/池田清彦著
[レビュアー] 岡本隆司(歴史学者・早稲田大教授)
ジェンダー・バランスにコンプライアンス。現代日本のポリコレ社会で男性を律する行動規範は、メンタルヘルス的にも生物学的にも、およそ有害無益、だから日本も「元気がない」。理路整然とそのゆえんを語ってくれる対談である。
「オスの本能」に任せては、人間社会は維持できない。だからといって、「男子の本懐」を男子が独占するなど、イマドキ不可能である。それでも「本来のオス」らしくありたい「本懐」は失うなかれ。
「SDGsはインチキ」、男は「厚かまし」くあれ、「心のエロ度」を全開に、不倫は「理屈に合った行動」など、いかに「科学的にも正し」かろうと、とても他人様に真顔でいえない。そこは「本音」を隠さぬ高齢者専門の精神科医と論客の生物学者に代(だい)辯(べん)してもらう。
男女共有できそうな、味のある章句もある。「女を敵に回してはダメ」、一緒に暮らすならルールは無用、「本音で喋(しゃべ)って楽しくやればいい」。
最後にオスが輝く「十訓」を列挙。「万人に当てはまるとは限らない」ので適宜取捨、自分にあったライフスタイルを探してみたい。(新潮新書、946円)