『10代からの文章レッスン』小沼理編著
[レビュアー] 尾崎世界観(ミュージシャン・作家)
「本が読めない」ことを書いた本が売れる時代。一体どうすればいいのか。なぜこうなっているのか。誰もが答えや理由を知りたがっていて、そうした本と一緒に、安心まで買っているのかもしれない。
「文章を書く」ことについて掘り下げる本書は、様々な職業に就く15人もの書き手が独自の書き方を教えてくれる。SNSやブログで発信したり、文学フリマに出店してオリジナルの冊子、ZINEを販売したり。書くは幅広い。文章レッスンというくらいだから、読めばきっと書くことが上(う)手(ま)くなるはずだ。
そう思って読んでみたら、書くことがさらにわからなくなった。何も考えずに書くとか、考え過ぎるほど考えて書くとか、15人それぞれの書き方があまりにもバラバラで、安心するどころかどれを参考にしていいか迷う。書くことは迷うことで、でもそんな迷いこそが書くための一歩かもしれない。そう思ったら、その迷いの先に、うっすらと「自由」が見えてくる。
たとえ遠回りでも、その自由のさらに先に、自分なりの答えや理由があるかもしれない。(河出書房新社、1562円)