『現場から社会を動かす政策入門』
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『現場から社会を動かす政策入門』西川貴清著
[レビュアー] 東畑開人(臨床心理士)
読み終わったときに、ムクムクと元気が湧いてくる本だった。ということは、読む前は元気がなかったわけだが、それは超要約すると、社会に絶望していたせいだ。
社会には様々な法律や制度があって、それらは本来人を助けるためにあるのだが、実際には人を傷つけたり、不自由にしたり、不公平な扱いをしていたりする。心理の現場ではそういうものがたくさんある。だけど、それらがどうやったら変わるのかわからない。これに絶望していたのだ。
そういうタイミングで、本書を読んだ。著者は厚生労働省の元官僚で、国の制度や法律がどのように作られ、動かされるのかを知り尽くしていて、制度を変えるために、誰と会えばいいか、何をすると良いか、理念ではなく、具体的な手続きを教えてくれるのだ。
道は遠いし、険しいのかもしれない。だけど、社会には実は小さな関節が沢(たく)山(さん)あって、グネグネ動く。そのために自分たちにもできることがあるのだから、仲間たちに話して、作戦会議をしてみようと思える。そういう本だ。多くの人にぜひ読んでもらいたい。(英治出版、2640円)