『共感されるリーダーの声の作り方・話し方』
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【毎日書評】4つの声を使い分けて。部下に共感される画期的な方法
[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)
部下が指示を理解してくれないとか、部下からの信頼を感じられないなど――。部下とのコミュニケーションは、なかなかうまくいかないものです。
だから上司は悩みを抱えてしまうわけですが、『共感されるリーダーの声の作り方・話し方』(司 拓也 著、ぱる出版)の著者によれば、部下に共感されるための画期的な方法があるのだとか。
それは、声を変えること。部下から共感され、共鳴される「声」を身につけることが、リーダーコミュニケーションの悩みを解決してくれるというのです。
その特徴は、親しみやすい笑顔や時折の冗談で部下との距離を縮めつつ、時には力強い言葉や的確なアドバイス、逆境に負けない強さや聡明さを見せる柔軟性にあります。状況に応じて適切な声と話し方を選び、部下を導くのです。
そう、共感リーダーシップの鍵は「声と話し方」です。部下を主役として支え、主体性を引き出す声と話し方は、彼らの才能を開花させ、チーム全体の力を最大限に引き出します。(「はじめに」より)
したがって重要なのは、 “共感されるリーダーになるための声と話し方”を身につけること。
そうした考え方に基づく本書のなかから、きょうはchapter1「共感リーダーの声と話し方とは?」に焦点を当ててみたいと思います。
共感リーダーの4つの声
“部下から共感されるリーダーの声”をつくるためには、4つの声の質感を身につける必要があるようです。著者はそのためのトレーニングのことを「トーンクオリティ・トレーニング」と呼んでいるそう。
多くの人が「声は生まれつき変わらない」という誤解を抱いています。
私のレッスン受講生も、約9割の方が、自分の声を嫌いだと感じながらも、声は変えられないと諦めていました。
しかし、それは大きな間違いです。
正しいトレーニングを行えば、声は必ず変わります。(22ページより)
そこで、“共感されるリーダーの4つの声”の特徴を確認してみることにしましょう。(22ページより)
1. エナジャイズ・ボイス(ハイ・フロント)
【特徴】
明るさ・明朗さ・快活さ・熱量・エネルギー
これは、部下や同僚に前向きなエネルギーを伝えるための明るい声。たとえばチームの成果をほめるときに明るい声を使うと、相手に喜びや自信を感じさせることができるわけです。声質としては高めの地声系の声で、「ハイ・フロント」と名づけられているようです。
【声の実例】
ある企業の営業部長・田中さんは、チームのモチベーションを高めるため、毎朝のミーティングで意識して明るい声を使っています。
「みんな、おはようございます! 今日も目標達成に向けて、ベストを尽くしましょう!」(25ページより)
こうした明るい声での挨拶が、部下たちの士気を高め、ポジティブな雰囲気を生み出すわけです。(24ページより)
2.ブレイブ・ボイス(ロー・フロント)
【特徴】
強さ・安定感・落ち着き・揺るぎなさ・地に足がついている
決断力やリーダーシップを示すための強い声。プロジェクトの方向性を示すときなどに強い声を使うことで、チーム全体に安心感と信頼感を与えることができるのです。声質は低めの地声系の声であり、「ロー・フロント」と呼ばれているそう。
【声の実例】
プロジェクトマネージャー・鈴木さんのチームは、プロジェクトの進行が滞り、締め切りに間に合わない状況が続いていました。
焦りが見えるチームの中で、鈴木さんは落ち着いた低い声でこう言いました。
「確かに進行が遅れていますが、心配はいりません。皆で協力しましょう。まずは深呼吸して落ち着きましょう。そして、今週中に必ず完了させましょう。(27ページより)
この強いことばがチームに対して示すのは、鈴木さんの決断力とリーダーシップ。結果的にはプロジェクトを成功へと導いたそうです。(26ページより)
3. エンパシー・ボイス(ハイ・エア)
【特徴】
やさしさ・品性・共感性が高い・思いやり・気遣い
部下や同僚に寄り添うためのやさしい声。困っている部下にアドバイスをする際などに使うと、相手は安心して相談することが可能に。なお声質は高めの息声系で、「ハイ・エア」と名づけられているといいます。
【声の実例】
IT企業の人事担当・山田さんは、新入社員のカウンセリングで、優しい声を意識しています。
「困ったことがあったら、いつでも相談してね」。(29ページより)
やさしい声でのサポートは新入社員たちに安心感を与え、早期に職場になじむ手助けとなっているようです。(29ページより)
4. メンター・ボイス(ロー・エア)
【特徴】
聡明さ・知性・熟練感・人生の機微に通じた・なんでも知っている感
知性や冷静さを示すための聡明な声。たとえば、会議で複雑な問題を説明するときにこうした声を使えば、相手に信頼と尊敬を感じさせることが可能。声質としては低めの息声系で、「ロー・エア」と名づけられているそうです。
【声の実例】
エンジニアリングチームのリーダー・佐々木さんは、技術的な問題を説明する際に、これまで培ってきた経験の豊富さや、余裕を感じさせる声を意識しています。
たとえ技術的な問題が起こったとしても、落ち着いた声で対応します。(31ページより)
佐々木さんの冷静で知的な声は、チームメンバーに信頼感を与え、問題解決の方向性を明確にしているようです。(30ページより)
最適な声の使い分けをすることで、部下との間に信頼と共感を築くことができると著者は断言しています。そのうえでリーダーシップを発揮するために、本書を参考にしてみてはいかがでしょうか。
Source: ぱる出版