電車の窓から、人間のような脚が生えた弁当箱が並走しているのが見える。駅に着くや弁当箱におにぎりが乗り込み、からあげ、おじさんが収まり―。お笑い芸人でもある著者の絵本は先が読めず、ニヤニヤが止まらない。描かれた街並みは緻密で、これはどこだろう、隣を走っているのは成田エクスプレスだろうか…などとワクワクもする。
車内はスマートフォンの画面を見る乗客たちが単色で描かれているせいか、静けさが漂う。わけあって乗り込んできたたまご焼きが、お年寄りに席を譲っている。たまご焼きに「顔」はないが、優しい味なのだろう。(幻冬舎・1650円)
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2024年11月3日 掲載
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