『ニッポン獅子舞紀行』
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『ニッポン獅子舞紀行』稲村行真著
[レビュアー] 宮部みゆき(作家)
全国の獅子舞を訪ね歩いた貴重なルポルタージュ。「日本最多の民俗芸能」といわれる獅子舞について、様々な知識が満載だ。たとえばごく基本的なことで、獅子頭に続くあの布の部分は「胴幕」「蚊帳(かや)」と呼ばれ、ちゃんと専門の職人さんがいるのだという。
そもそも獅子舞の起源とは何か。なぜ「獅子」なのか。獅子は邪を退けてくれる善のキャラにも、邪をはらむ悪のキャラにもなる。強大な力を持つ荒ぶるものとして畏怖されながら、一方では親しまれてきた摩訶(まか)不思議な存在だ。
上の写真は茨城県石岡市の「常陸國(ひたちのくに)總(そう)社(しゃ)宮(ぐう)例(れい)大(たい)祭(さい)」で町を練り歩く巨大な獅子舞である。勇壮で美しく、何ともいえない愛嬌(あいきょう)がある。本書の美麗なカラー写真で全国各地の獅子舞を眺めれば眺めるほどに、その多様性と豊かな物語性に魅せられて、ますます謎が深まってゆく。(青弓社、2640円)