『オフ・オフ・マザー・グース』
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誰が殺した? コマドリを 私、と答えたのはスズメ
[レビュアー] 北村薫(作家)
子供の頃、「ディズニーランド」というテレビ番組が楽しみでした。ある時予告で「次は漫画『コマドリの死と埋葬』。矢で射られて死ぬコマドリとは、ある政治家を皮肉ったもの」といっていました。気になりましたが、その回は観ていません。
これは伝承童謡集「マザー・グース」の唄のひとつですが、時に英国の首相ロバート・ウォルポールの失脚とからめて論じられたりもする――と、その政治家の名をはっきり知ったのは大人になってからです。
中学生になって、ヴァン・ダインの名作『僧正殺人事件』で、またこれと巡り合いました。ほかにも、いろいろな形で取り上げられることのある唄です。訳も数多い。ここでは、和田誠の『オフ・オフ・マザー・グース』をご紹介しましょう。
誰が殺した? コマドリを
私、と答えたのはスズメ
(中略)
誰が持つ? 葬儀のあかり
私、と答えたジュウシマツ
和田訳で特筆すべきなのは、百二十の唄すべてに櫻井順による曲がつけられていて、しかも「みんなくたくた」に井上陽水、「フェル先生」に忌野清志郎、「悪魔」にデーモン小暮閣下など、なるほど――とうなるしかない歌い手の配された二枚のCD『オフ・オフ・マザー・グース』『またまた・マザー・グース』が別に作られていることです。
ちなみに最後が「コマドリの死」、歌っているのは有志一同です。