がんばっても評価されないと嘆く前に、会社で正当な評価を受ける努力をしたか?

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その悩み、佐久間さんに聞いてみよう

『その悩み、佐久間さんに聞いてみよう』

著者
佐久間 宣行 [著]
出版社
ダイヤモンド社
ジャンル
社会科学/経営
ISBN
9784478120972
発売日
2024/11/07
価格
1,694円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

【毎日書評】がんばっても評価されないと嘆く前に、会社で正当な評価を受ける努力をしたか?

[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)

その悩み、佐久間さんに聞いてみよう』(佐久間 宣行 著、ダイヤモンド社)の著者は、「仕事は人間でできている」という持論を持っているのだそうです。

どんなに成功した案件も、あるいは失敗したプロジェクトも、そこにいる人間の日々の仕事の積み重ね。だからこそ“人間”を見つめないと、仕事の悩みは解決できないということ。

たしかに難しい時代です。価値観も市場も揺れ動いています。

多くの企業が変化を求められ、新しい武器を身に着けないと、と焦る気持ちもわかります。

けど、たくさんの悩みを聞いているうちに、気づいたことがありました。多くの方が、その大きな時代の変化に立ち向かう前に「会社との正しい向き合い方」ができていないと感じたのです。

そこにひずみやズレがあるから感情とメンツに振り回される。

自分と周囲を客観視して悩みを言語化できれば解決策は見えてくるのに、その前に気持ちが参ってしまう人が多い気がする。

だから、もう一度本を書こうと思いました。(「はじめに」より)

執筆に際して意識したのは、「どの立場、どの年代の方が読んでも役立つ本にしたい」ということだったのだとか。また、それぞれのテーマごとに、「若い方が読んだら上司の気持ちが、上司が読んだら部下の本心が理解できるようにする」という思いもあったようです。

優しく、ずるく、心を潰さず、会社で起こるさまざまな困難に立ち向かえる本にする。『ずるい仕事術2・0』の側面もありますが、強度も使いやすさも増したと思います。(「はじめに」より)

そんな本書のなかから、きょうは第1章「仕事は『要領よく』考える」内の「『誰にでもできる仕事』と思わせてはいけない」という項目に焦点を当ててみたいと思います。

上司には相談したか?

「がんばっているのに評価されない」とか、「努力が報われない」などと悩む人は少なくないもの。しかしそういう人は、“自分の仕事が正当に評価される努力”をまずすべきだと著者は述べています。なぜなら、「がんばっても報われない」と感じられる仕組みのなかでモチベーションを上げようと思っても、うまくいかないものだから。

著者自身もギリギリまでがんばった挙げ句、心が折れてしまってしばらく引きこもったことがあるそうです。問題を自分のなかに抱え込んだまま踏んばりすぎると、精神的にタフな人でも心身を壊しかねないと断言できるのはそのせい。

では、どうすればいいのでしょうか?

そんなときは一度、「給料と仕事量が見合っていない」ということを上司にはっきりと伝えるべきだというのが著者の意見。難しそうだと感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、とはいえマネジャーが現状を把握しないまま仕事が正当に評価されることなどないのです。

それどころか、もしかしたら会社側が「あの人は不平不満をいわないから、このままの給料でやらせておこう」と考えている可能性だってあるかもしれません。しかし、そんな職場では誰だってメンタルをやられてしまいます。(30ページより)

「誰でもできる仕事」の時給は安い

一方、そんな状態が放置されている別の原因も考える必要があるようです。それは、会社がその業務を「誰でもできる仕事」だと思っている可能性。つまり、「誰がやっても同じ仕事」「替えがきく仕事」だと思われているから、安く使われてしまっていると考えることもできるということです。

この状況を変えるには、2つの方法しかない。

1つは、それが誰にでもできる仕事じゃないと気づかせること。繁忙期に休みを取って、「〇〇さんがいないとこんなに大変なんだ」とわからせる、みたいなこともいいかもしれない。

もう1つは、「誰にでもできる仕事」というのが事実なら、その仕事にかける工数は減らして、社内で評価されやすい別の仕事に手を伸ばすこと。

取り替えがきくと見られているなら、その仕事は効率化して、給料の発生する範囲で、自分の色が出せて社内で評価されやすい別の仕事を1つでもいいからゲットする。(32〜33ページより)

たしかにそういう仕事に取り組んで結果を出せば、会社の評価が変わる可能性は大いにあるのではないでしょうか。(32ページより)

会社側も「評価のしくみ」を見なおす

逆に自分がマネジメントサイドにいる場合は、現場を支える人たちの不満が高まらないよう、“評価のしくみ”に目を配ることを忘れるべきではないでしょう。

重要なポイントは、現場が不満を直接伝えてくるのは、ギリギリまで我慢したあとである場合が多いという事実。フラストレーションがたまるほど自体は深刻化していきますから、本来ならそこまで溜めずに話し合えたほうが絶対にいいわけです。

かつてテレビ局に勤めていた著者も、次のように振り返っています。

テレビ局は基本的にはベースの給料が結構安くて、残業代がつかなくなると給料が下がる。だから20代、30代のときに現場でバリバリ残業していたディレクターは、偉くなって役職がつくと残業が減って手取りが減る。

僕も自分より若いAD(アシスタントディレクター)のほうが給料をもらっている時期があった。ADの仕事が遅くて一緒に残業していると、自分は管理職だから固定給だけど、ADは延々と給料が増える……。そんなモヤモヤする時期があったのだ。(33〜34ページより)

いま思えば、それも早く上司に相談すべきだったと感じているそう。特殊なケースかもしれませんが、似たような状況はどのような会社、どのような職種にもあてはまるのではないでしょうか。(32ページより)

「ノート」に書いて整理しよう

人はうまくいっていないときほど、問題の原因を周囲に求めがち。しかしそういうときほど大切なのは、自分の状態を俯瞰し、正しく理解することです。そこで著者は、ひとつの方法を提示しています。

「なんだかうまくいかない」「努力が報われない」とモヤモヤするなら、1行メモでもいいから気づいたことを毎日ノートに書いてみる。(34ページより)

悩んだときにはそのノートを見れば、自分の打つ手が見えてくるわけです。(34ページより)

前述のとおり、ベストセラーとなった2022年作『佐久間宣行のずるい仕事術』の延長線上に生まれた一冊。多くの時間をかけ、何度も話し合いながらつくりあげたというだけあって、よりよく仕事をするためになにかと役立ってくれそうです。

Source: ダイヤモンド社

メディアジーン lifehacker
2024年11月19日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

メディアジーン

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