『牛乳から世界がかわる』
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『牛乳から世界がかわる』小林国之著
[レビュアー] 岡本隆司(歴史学者・早稲田大教授)
乳酪品に目がない。牛乳・ヨーグルト・チーズは日々不可欠、そんな生活を送っているくせに、酪農業の現在を考えたことはなかった。
そんな蒙(もう)を啓(ひら)いてくれる一冊。飼育・生産にまつわる乳牛の生態、貿易・海外の欠かせない物産の流通、環境・生態系に関わる土壌再生(リジェネラティブ)なども視野に入ってくる。
高度な内容にもかかわらず、あくまで実地に即した理解をうながす努力が貴重だ。マンガあり図解あり、門外漢にも親しみやすい。
それもそのはず、副題は「酪農家になりたい君へ」。酪農志望の学生とともに、現場密着の取材も満載だから、酪農家の何たるか、どうやって牛乳ができるのか、よくわかる。
毎日の牛乳が「世界とつながる」。厳しき国際情勢のなか、好物の行く末を考える時間があってもいい。(農山漁村文化協会、1760円)