『東大ファッション論集中講義』
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『東大ファッション論集中講義』平芳裕子著
[レビュアー] 小池寿子(美術史家・国学院大客員教授)
ファッションへの関心が高まる一方、研究対象として浅いという偏見はいまだ学術界にある。しかし近年、カルチュラルスタディーズ(文化研究)としての領域を開拓し、社会経済と連動して深化し続けているのがファッション論だ。人はなぜ服を着るのか、裁断と縫製技術は慣習や嗜(し)好(こう)といかに関わりながらスタイルを形成してきたのか。本書は、従来の服飾史を踏まえて批判的に問題点を整理し、最新のファッション学を鮮明にする刺激的な一冊だ。
日本では、ファッション研究に現象学的身体論から新機軸を打ち出した鷲田清一の『モードの迷宮』を端緒に、1990年代以降、記号論や表象論、メディア論など各分野からアプローチされてきた。一方、パリ中心のモード界に日本人が進出し、日本のデザインは国際的な評価を得た。さらにアメリカに始まったファッション展覧会は日本でもトレンドになっている。洋装に対して和装の展開は? ファストファッションの行方は? 興味は尽きない。
4日間12テーマの集中講義をまとめた本書は、分かりやすく多角的な考察が読者を魅了する。(ちくまプリマー新書、990円)