『責任』
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『責任』浅野皓生著
[レビュアー] 宮部みゆき(作家)
今年の横溝正史ミステリ&ホラー大賞の優秀賞受賞作。警察ものではあるが、核になるのはあくまでも主人公の刑事の個人的な葛藤である。
雪の深夜の当直中、不審車両を見つけて職務質問する主人公。運転者の若者は挙動不審で逃走を図る。追跡されるとやみくもにスピードを上げ、無関係の一家四人を巻き込む大事故を起こして死亡してしまう。この若者には凶悪犯罪で少年院に入った前歴があり、職質をかけられる前に強盗致傷事件を起こしていたらしき事実も判明。しかし、主人公は五人もの死者を出してしまったことへの自責の念から抜け出せずに苦しんでいる。そこへ若者の両親から、息子は更生していた、あの夜の強盗致傷事件の犯人ではないと訴えられ、私的な再調査を引き受けることになった。もう新事実など出てくるはずはなかったのだが――。
よくまとまった良作で、意外な展開もある。丁寧にきっちりつくられた二時間尺のミステリードラマという印象は、けっして悪くはない。この作風を土台に、今後は思い切った冒険もしてみてください。(KADOKAWA、1870円)