『思春期心性とサブカルチャー』
書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます
『思春期心性とサブカルチャー』岩宮恵子著
[レビュアー] 東畑開人(臨床心理士)
片思いをしながら心が育ち、鏡の前で髪の毛をいじり続けながら自分と社会との接点を見つける。そんな現代の子どもたちの心を、熟練のスクールカウンセラーが描いた一冊だ。
良き心理士は、外からは一見ネガティブに見える行動の裏で、実は成熟につながる試行錯誤がなされていることを見て取る。本書には外見を気にしすぎたり、友人の意見に右往左往したり、学校に行けなくなったりする子どもたちの事例がたくさん出てくる。著者は彼らとマンガやアニメ、ゲームの話をしながら、子どもたちの心の深層で、現実と向き合い、大人になろうとする切ない思いが蠢(うごめ)いていることを見てとる。すると、そこに私たち大人の心も浮かび上がる。
思春期を考えるとはそういうことなのだ。私たちも昔子どもだったし、今も子どもの心をどこかに残している。だから、この本を読んでいると、今の思春期の心に触れられるだけではなく、私たち自身の、実はまだまだ未熟なままの心を思い出さざるを得ない。これがちょっとヒリヒリするのだけど、それこそが心理学の素晴らしさだと思う。(遠見書房、1980円)