『漆と伝統』
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『漆と伝統』室瀬和美著
[レビュアー] 産経新聞社
漆芸技法「蒔絵(まきえ)」の人間国宝、室瀬和美氏が漆の技法や技術史、文化財の修理などについてつづった本。日本では、漆を塗った面を研磨して鏡面のようなつやを出す技が生み出された。さらに貝殻の内側にある真珠層や金・銀などで装飾されることから、漆芸は「光の装飾表現」と言えるそうだ。
文化財の修理に関する逸話が興味深い。日本では漆工品は漆で直すもので、数百年の保存修理の歴史が安全性を証明しているが、海外では合成樹脂が使われる。過去には国際会議で修理に漆を使わない方向で決議されたことがあり、3年後の会議で室瀬氏が反論したという。(白船社・2200円)