『朝鮮半島の歴史』
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謀反、粛清、賜死、反正…朝鮮王朝の苛烈な歴史は現代韓国へ
[レビュアー] 明石健五(「週刊読書人」編集長)
なぜ韓国で戒厳令? たった6時間で解除、国民からは「恥ずかしい」の声
韓国が揺れている。12月3日22時25分ごろ、尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領は1980年以来となる非常戒厳令を宣言したが、たった6時間で解除された。
宣言時のテレビ演説で、尹大統領は「北朝鮮の共産勢力の脅威から大韓民国を守るため」、「親北朝鮮の反国家勢力を根絶するため」、「自由な憲法秩序を守るため」に戒厳令を発したと述べていた。
戒厳令を宣言するほど差し迫った国家転覆の危機があるのかと思いきや、共感の声は多くなさそうだ。本来は尹大統領の味方であるはずの与党・国民の力からも激しい反発が起こり、韓東勲(ハン・ドンフン)同党代表は戒厳令を「違憲、違法」だと切り捨て、尹大統領の脱党を要求。
親北朝鮮の反国家勢力として尹大統領が非難していた野党・共に民主党は、戒厳令の布告が反逆行為にあたるとして、尹大統領が即時辞任しない場合は弾劾手続きを開始することを表明。与野党の双方から、非難が噴出しているのである。
韓国の各メディアは、大統領の戒厳令は「北朝鮮から国民を守るため」ではなく、野党が過半数を占める国会での予算案について大統領が行き詰まっていることや、野党が大統領夫人の金建希(キム・ゴンヒ)氏の賄賂や株価操作疑惑を追及していることが主な要因であると指摘。
国民からも非難囂々で、戒厳令直後にはソウルの国会周辺に抗議する人々が殺到していた。SNSには憤りを通り越して嘆きや呆れの声が多く見られ、Xでは「なんでやったん?」「心から恥ずかしい」「正気か」「今後30年は我が国はからかわれる羽目になる。泣かせてくれ」という韓国人の投稿が見られた。
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今後の尹大統領はどうなる? これまでの歴代韓国大統領の悲惨な末路を振り返る
戒厳令の翌日、韓国国会では、野党から尹大統領に対して弾劾訴追案が提出された。早ければ12月7日には、採決が行われる見通しとなっている。
与野党から3分の2以上の賛成が集まれば、弾劾は成立することになる。仮に弾劾訴追案が可決されれば、尹大統領は憲法裁判所の判断が示されるまで職務停止となり、内政や外交もできなくなる。
それだけでなく、野党・共に民主党は尹大統領を内乱罪で告発すると表明しているため、もし有罪になれば、死刑、無期懲役、または5年以上の懲役の刑罰となるのだ。
最悪の場合、死刑になる可能性が出てきた尹大統領。まさか21世紀にもなって、先進国の大統領がこんな事態を引き起こすとは、と日本人ならば思うかもしれない。が、韓国の歴代大統領を振り返れば、見えてくるものがある。
朝鮮などの東アジア近代史を専攻する新城道彦教授(フェリス女学院大)の著書『朝鮮半島の歴史――政争と外患の六百年』では、14世紀末の朝鮮王朝成立から、20世紀の南北分断に至るまでの道のりを解説し、朝鮮国家特有の政治力学にも迫っている。
「週刊読書人」編集長・明石健五さんによる、音声プラットフォーム「Voicy」のチャンネル「神網(ジンネット)読書人」での同書の解説をご紹介する。(テキストに適宜加筆修正を施した2023年7月4日配信記事を再構成したものです)
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