『いちばんわかりやすい問題発見の授業』
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【毎日書評】まだみえない問題を見つける手法「コンセプトピラミッド」とは?
[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)
私たちは日々、現状と理想のギャップを埋めるために活動しています。
このギャップを埋めるために頭の中でモヤモヤとしているもの、実はその正体が「問題」なのです。
「良い問題」を見つけ、それを解決すれば、成果が生まれます。(「まえがき」より)
『いちばんわかりやすい問題発見の授業』(ツノダフミコ 著、ワニブックス)の著者はこう述べています。つまり、問題を解決する力こそが、理想の状況を実現させるということ。
どれだけ高い解決力を持っていたとしても、“解決すべき問題”を間違えたり、向かうべき問題を誤ったりしたら“望む結果”に結びつきません。だからこそ、「すべては問題スタート、問題ありき」。そうなると当然、企業からも“問題解決型人材”ではなく、“問題発見型人材”が求められることになるでしょう。
問題発見型人材が貴重である理由、それは「まだ見えていないこと(もの)を見る」力を持っている、からです。
根本的解決のための問題を発見する。大問題になる前の小さな問題をいち早く発見する。より良い未来の創造につながる問題を発見する。
問題発見力の高い人は、問題や悩みを解決し、目標を達成するだけでなく、未来をつくっていく人でもあるのです。(「まえがき」より)
つまり著者は本書を通じ、読者に問題発見力を身につけてもらうことを目的としているわけです。ここで紹介されている問題発見の技術である「コンセプトピラミッド」の各ステップを踏むだけで、問題を発見できるようになるのだとか。
コンセプトピラミッドとは、文化人類学者の川喜田二郎博士が考案した「KJ法」をベースにして開発されたものだそう。はたして、どのようなものなのでしょうか?
シンプルな4ステップで真の問題が見つかる
コンセプトピラミッドは、以下の4ステップのようになるそうです。
【ステップ①】ピースを埋める
【ステップ②】ピースをチェックする
【ステップ③】ピースをグループ化する
【ステップ④】真の問題を発見する
(23ページより)
ここでいう「ピース」とは、テーマに対する材料やネタのひとつのこと。テーマに関連した情報や考え、アイデアなどがそれにあたるわけです。
「もっとも小さい情報のカケラ」が「ピース」だということですが、それは頭のなかにあるモヤモヤやアレコレの断片でもあるはず。したがって、頭のなかにあるものを文字化し、書き出していくことが問題発見のファースト・ステップになるわけです。(23ページより)
手順さえ踏めば必ず成果を得られる
自分のなかに存在しながらも、まだ見えていない真の問題を発見し、そこから気づきを得ることはとても重要。とはいえ、それは難しそうでもあります。
しかし、いくつかの簡単なルールやコツに従い、ステップに沿って進めていけば、誰もが真の問題にたどり着けるのがコンセプトピラミッドです。
そもそも「誰もが手順を踏めば必ず成果を得られる」ことを目的として開発された技法なのですから。(26ページより)
コンセプトピラミッドに取り組む時間は、自らの思考を鍛え、言語化力を伸ばしていくプロセスそのものだと著者はいいます。
現代においては、情報ならいくらでも手に入ります。しかし、「考えること」「書くこと」に取り組む時間は意識しなければ得ることが難しくもあります。そんななか、コンセプトピラミッドに取り組む時間は、自分自身と対話できる重要な時間になるというのです。(26ページより)
テーマは“ザックリ”“なんとなく”でいい【準備①】
まず最初にするべきは、テーマを決めること。たとえば個人についてのテーマを設定する場合は、次のようになるわけです。
・今、悩んでいること
・今、わからないこと
・今、問題だと思っていること
(28ページより)
心のなかにあるモヤモヤや悩み、解決したいこと、達成したいことなどをひとつ選び、テーマとして設定するということ。自分がいまから「なにに取り組むのか」を意識するためにテーマを決めるのです。
もちろん、「人間関係で悩んでいる」といったプライベートなことでも「新商品のアイデアが浮かばない」というようなビジネスに関する内容でも大丈夫。(28ページより)
3つのアイテムを使うと、よりスピーディーに【準備②】
コンセプトピラミッドは、紙のノートに書き出していくのはもちろん、PC上でもできる手法。とはいえ、ある程度の技術やコツが身につくまでは、あえて「カード」や「フセン(付箋)」を使って行うべきだと著者は述べています。
その際、次のようなものがあると手際よく進めることができるようです。
1. カードやフセン
まずは、横7センチ×縦5センチ程度の紙片を用意。小さなサイズが気にならないのであれば、もっと小さなサイズでもかまわないそうです。
具体的には「白い紙を30〜50枚程度」「青の紙を20枚程度」「黄、ピンクの紙を各10枚程度」用意すればいいようです(ただし紙の色に決まりはなく、異なる3色があれば大丈夫)。
2. 黒の筆記具
えんぴつ、シャープペンシル、ボールペン、サインペンなど、黒い文字が書けるのであれば筆記具はなんでもOK。
3. クリップ
数枚の紙を束ねることが目的で、30個程度あればいいようです。
これが、コンセプトピラミッドを使いこなすための準備。以後の章では、これら4ステップについてより詳細な解説がなされていくことになります。(28ページより)
著者は戦略コンサルタントとして、有名・大手企業の方々の問題発見の技術を伝えてきたという人物。つまり本書には、そうして得たノウハウが体系化されているわけです、問題発見力を仕事にフル活用するために、それらをぜひとも身につけておきたいところです。
Source: ワニブックス