ことばのチョイスを変えるだけ。「断り方で損しない人」になる3つの言い換え例

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伝え方で損する人 得する人

『伝え方で損する人 得する人』

著者
藤田卓也 [著]
出版社
SBクリエイティブ
ジャンル
社会科学/経営
ISBN
9784815627942
発売日
2024/11/02
価格
1,760円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

【毎日書評】ことばのチョイスを変えるだけ。「断り方で損しない人」になる3つの言い換え例

[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)

部下の励まし方で困ってしまったり、上司を説得できなかったり、うまく断れなかったりと、コミュニケーションに関する悩みは仕事につきもの。

コピーライターである『伝え方で損する人 得する人』(藤田卓也 著、SBクリエイティブ)の著者は、その原因は「伝え方」にあるのかもしれないと指摘しています。

言葉は思いや感情が変換されたもの。受け取るときには、言葉を再び変換することで、その意味や感情、意思を理解します。伝え方によっては、相手の感情を悪い方向へ動かしてしまう力があるのです。(「はじめに」より)

たしかに、「伝え方」を必要としない仕事はありません。伝えることなしに、良好な人間関係を築くこともできないでしょう。そういう意味で「伝え方」は、あらゆる物事を動かすきっかけになるといえそうです。

言葉をきっかけに物事を動かすチャンスは、あなたの周りに数えきれないほど潜んでいます。何かを伝えるという機会は、日常生活においてそれほどたくさんあるからです。ここに小さな変化が積み重なったとしたら、やがて人間関係や評価、キャリアにおいて大きな違いが生まれるのです。(「はじめに」より)

そこで、よりよく伝えることができるようにとも思いから書かれたのが本書。著者によれば、日常のコミュニケーションを根本から変えるためのガイドブックなのだそうです。

この本はすぐ読めてすぐ使える、速効性と即効性にこだわっています。なぜなら、「伝え方」は、誰でもいつでもどこでも、変えることができるからです。(「はじめに」より)

そんな本書のなかから、きょうは第5章「『断り方』で損する人 得する人」をクローズアップしてみたいと思います。

【損】それは無理です→【得】ここまでなら可能です

断り方の難しさは、ときとして相手を傷つけかねないこところにあります。また、強い表現を用いれば用いるほど、相手にダメージを与える可能性も大きくなっていきます。その結果、ことばを発した自分自身が罪悪感を覚えることになる場合もあるかもしれません。

そこで、そういう場合は「ここまでなら可能です」と言い換えをしてみようと著者は提案しています。否定を、肯定という正反対の表現に変換するイメージ。そうすれば、「まず大前提として協力したいのです」という意思表示になるというわけです。

また、具体的な範囲や条件を示せば、相手はこちらがどれだけ忙しいのか、どういう状況なのかを理解できるようにもなるはずです。

プロジェクトのスケジュール調整を依頼されたとしましょう。「そのスケジュールは無理です」と単に断るのではなく、「この期間まででよければ対応可能です」と具体的な範囲を示すことで、相手はどうするべきか前向きに検討することができます。どの条件が変われば引き受けることができるのか交渉を持ちかけてもいいでしょう。(143ページより)

大切なのは、相手に対する尊重と協力の姿勢を示すこと。そうすれば、もし条件が折り合わなかったとしても、相手は正当に評価し、信頼を寄せてくれるようになるわけです。(142ページより)

【損】いま忙しいんです→【得】今週は時間が取れませんが、来週以降でしたら

断りのシーンにおいては、しばしば「いま忙しいんです」というフレーズを耳にします。しかし、それではどうしても拒絶の印象が強調されてしまいます。それでは相手から共感してもらえるはずもなく、それどころか「雑に断られてしまった」と思われてしまうかもしれません。そういった誤解がもとで相手との関係がぎくしゃくすることも考えられるので、できれば避けたいところ。

では、どうしたらいいのでしょうか?

「今週は時間が取れませんが、来週以降でしたら対応できます」という表現は、具体的なタイミングを示すことで相手に対して柔軟性と協力の意思を伝える方法です。相手に対して具体的なスケジュールを提示しているので、対話を止めることもありません。(145ページより)

たとえば新しい案件の依頼があった際には、「いま忙しいんで」と断る代わりに、「今週は会議やプロジェクトが立て込んでいて忙しいですが、来週の月曜になら参加可能です」というように伝えればいいわけです。

代案を示せば、相手に対して配慮や尊重の姿勢も伝わるはず。具体的な予定であればあるほど、相手はこちらが自分の依頼を真剣に考えていると捉えてくれるため、信頼感も高まるということです。(144ページより)

【損】いまは結論が出せません→【得】いったん状況を整理させてください

提案や議題に対して答えを求められているとき、「いまは結論が出せません」と断ってしまうと、「じゃあ、いつならいいんだ?」と問い詰められてしまうことも考えられます。そればかりか、一方的にうやむやにされた」という印象を持たれてしまうかもしれません。

「現在の情報が不十分なため、いったん状況を整理させていただき、再度ご連絡いたします」と具体的な次のステップを示す。こうした情報共有で相手は今後の進め方をスムーズに理解できます。

次の予定が立つと、現状を問い詰められることはガッと減ります。「予算配分を再整理します」とタスクを共有すれば、調整の難易度も伝わります。

のちのち断ることになったとしても、相手側が受け入れる心の準備になりますし、なんなら予算調整に役立つ情報を用意するなど対策も打てるのです。 (153ページより)

やんわりとタイミングのせいにするだけでなく、タスクやネクストステップを伝えることが重要だという考え方。現時点で断ることになったとしても、いずれこちらから協力を求める日が訪れるかもしれないのです。そういう意味でも、長期的な信頼関係を意識し、相手に対する情報共有を惜しまないようにすることが大切だというわけです。(152ページより)

たとえばこのように、とても実用性の高い一冊。「損する人」と「得する人」を対比させながら解説がなされるので、要点を無理なく理解することができるでしょう。ビジネスシーンではことばのチョイスが重要な意味を持つだけに、ぜひとも活用したいところです。

Source: SBクリエイティブ

メディアジーン lifehacker
2024年12月6日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

メディアジーン

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