「紀伊國屋ビルディング」(東京)や「岡山県庁舎」などで知られる建築家、前川國男(1905~86年)。設計事務所の部下でもあった建築史家が、前川の歩みをその言葉とともに振り返る。
先の大戦直後の資材不足の中で、前川は市井の住宅再建を模索した。その後も、師事したル・コルビュジエの思想を胸に「人間の建築」を体現しようとする姿は、住みよい社会の在り方をも問う。
日本を代表する建築家だが、昭和39年の東京五輪施設の設計にその名がない。「言うこと聞かねえから」。関係者が明かしたそうした内幕も、前川の矜持を物語る。(みすず書房・7480円)

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2024年12月8日 掲載
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