『ブレイクスルー ノーベル賞科学者カタリン・カリコ自伝』カタリン・カリコ著

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ブレイクスルー ノーベル賞科学者カタリン・カリコ自伝

『ブレイクスルー ノーベル賞科学者カタリン・カリコ自伝』

著者
カタリン・カリコ [著]/笹山 裕子 [訳]
出版社
河出書房新社
ジャンル
自然科学/自然科学総記
ISBN
9784309254708
発売日
2024/07/12
価格
2,640円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

『ブレイクスルー ノーベル賞科学者カタリン・カリコ自伝』カタリン・カリコ著

[レビュアー] 為末大(Deportare Partners代表/元陸上選手)

 新型コロナウイルスで世界中が混乱していた時、わずか1年程度で開発され、人々を救ったメッセンジャーRNA(mRNA)ワクチン。開発の立役者が自らの半生を振り返っている。

 冷戦下のハンガリーで育ち、狭き門を潜(くぐ)り抜け科学者としての道を切り開いていく。とにかく印象的なのはどのような困難があっても、諦めないで意思を貫く姿だ。

 野球の大谷翔平選手など分野を超えてブレイクスルーを引き起こす人間に共通点はあるのだろうか。一つに焦点がブレないことがあるのではないかと感じている。情報や選択肢が多く、他人の成功も目につく現代で、自分のやるべきことに焦点を絞り続けるのは容易ではない。むしろ愚直な人生しか生きられない不器用さが、画期的な成功につながったのではないか。

 個人的な驚きとしては、カタリン・カリコ氏の娘さんがボート選手としてオリンピックで金メダルを獲得しており、同じ大会に私も出場していたことだ。焦点を絞る能力はスポーツでも重要だから、性質が引き継がれたのかもしれない。笹山裕子訳。(河出書房新社、2640円)

読売新聞
2024年12月13日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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