『あなたのお客さまに刺さる ネーミングのヒント』
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【毎日書評】価値が伝わる、欲しくなる。「商品名に入っていなければならない」3つの要素
[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)
きょうご紹介するのは、『あなたのお客さまに刺さる ネーミングのヒント』(青野まさみ 著、ぱる出版)。
自分でビジネスをやりたいけれど、「新規のお客さまが獲得できない」「新しい商品をつくったけれど、お客さまの反応がイマイチ」など、商品やサービスづくりがうまくいかに悩む人に向けて書かれたという書籍です。
まず注目すべきは、マーケティングコンサルタント/商品ネーミングコンサルタントである著者による次の指摘。
商品が売れないのは、自分自身の価値や相手に提供するものを見ずに、自分がやっていることだけを見て商品をつくってしまうからです。よく「自分の強みや専門性を活かした商品をつくりましょう」といわれますが、ほとんどの人は自分の強みを自分で見つけることができません。仮に見つけられたとしても、それをお客さまの欲しいものに変換できないことがほとんどです。(「はじめに」より)
自己都合しか考えていない表現や、ひとりよがりな表現をした商品は売れないということ。では、どうすればいいのでしょうか?
ポイントは「商品名」です。商品名を工夫すれば、自分の価値を一瞬で伝えられます。そして、相手の欲しい成果を期待させることができます。
たかが名前、と思われるかもしれません。しかし、名前の効果は想像を超えるものがあります。名前を通じて商品が磨かれるし、名前を通じてお客さまはその価値を感じるのです。(「はじめに」より)
そこで著者は、自分で商品をつくってビジネスをする方に向け、「ブランドや商品の名前のつけかた」を伝えようとしているわけです。きょうはそのなかから、第4章「商品名に入っていなければならない3つの要素」に注目してみたいと思います。
要素1:誰のために
ひとりビジネスのオーナーや個人事業主などの場合は、お客さまに「これって、自分のためのものだ」と思わせるなにかが名前に入っている必要があると著者は述べています。
世の中には、同じような商品やサービスがあふれているもの。したがってその機能、つまり“自分が得られる変化”だけでは購買まで結びつかないということです。
ですから、機能だけではなく、お客さまに自分のための商品だと思わせる要素が、名前に入っていなければならないのです。とはいえ、「シニアのための〜」とか「子育て中の主婦のための〜」といったように、ダイレクトに「誰のために」を入れるだけが答えではありません。そもそも、名前はできれば短いほうがよいので、あまり名前を長くするのはよい手段ではないのです。(111ページより)
そこで重要なのは、「ターゲット顧客がなにを考えているか」を把握すること。それは、お客さまの性格や価値観を考えていれば見えてくるようです。
たとえば、「オーガニック野菜に関心がある人は、どんな価値観を持っているか?」を考えれば、「オーガニック野菜」ということば自体が顧客を限定することがわかります。
そうした角度から考えれば、お客さま像を明確にできるわけです。そのお客さまが反応しそうなことばを使うことで、直接的な表現でなくても「誰に」を伝えることが可能になるのです。(110ページより)
要素2:相手の受け取る変化
「相手の受け取る変化」も、名前に必ず含まれなくてはいけない要素。とはいえ「1か月で10キロ痩せる」など、数値で理解できるすごい変化がないとダメだということではないようです。
もっと些細な感情面での変化でもいいということ。「気持ちが静まる」とか「安らぐ」とか、「ウキウキする」とか「やる気になる」というような変化が起きることも価値であるわけです。
「相手の受け取る変化」を語るうえで大事なことは、相手を変化させるつくり手の意思が名前に表れていることだと思うのです。その意思が入っていれば、一見よくあると思えるような名前でも、お客さまには伝わります。(115ページより)
逆から考えてみれば、自分が腹落ちしていない“それらしい名前”を見つけたとしても、それは人を動かさないということ。
例えば、ステージアップラボというコミュニティがあったとします。この名前だけでは、なんとなく既視感があると思います。
それでも、それが相手の受け取る価値を考えて、自分の感情や思いを詰め込んだものであれば、人は動くのです。一通り考えてみた結果、「自分はこれで行く」と決心したのなら、大丈夫なのです。(116ページより)
とはいえ、既視感のある名前には注意が必要です。そこで、可能であれば「もうひとひねりできないか」「たとえを上手に使えないか」「言い換えができないか」など、検討してみたほうがいいようです。(113ページより)
要素3:視認性と想起しやすさ
「視認性と想起しやすさ」は、名前をつける際にもっとも大切な要素。「それがなんなのか、すぐに理解できる」ことであり、なかでも“提供するサービスがなんであるか”がわかることが重要だということです。
商品にするときには最低限、お客さまがすぐに内容を理解できることが大事なのです。だから商品名をつくるときには、料理の「講座」、カラー「診断」といったように、提供するものをわかりやすい言葉、つまり名詞にするべきなのです。(119ページより)
加えて、「相手の受け取る変化」もわかりやすく入れ込むべき。かっこいいことばをつなげるよりも、栄養ドリンクなら「エナジー〜」とするとか、睡眠薬なら「スリープ〜」というように、ベタであってもわかりやすい名前にすることが大事だということです。
さらに、なるべく短い単語の方が覚えてもらいやすいものでもあります。長さに関しては、全体の文字数を17文字くらいにするのがおすすめだそう。日本語の場合、多くのスマホの機種で1行に収まる文字数だからです。
また、英語がたくさん並んでいると“それがなにか”がわかるまでに時間がかかってしまうため、英単語がたくさん並んだ名前も避けたほうがいいようです。(118ページより)
本書を読めば、商品名のつけかたはもちろん、ことばの使い方やマーケティングの本質までをも理解できるはずだと著者は述べています。ビジネスのポテンシャルを広げるため、参考にしてみたいところです。
Source: ぱる出版