ビジネスシーンで役立つ日本の「神様」についてのノウハウとは?

レビュー

  • シェア
  • ポスト
  • ブックマーク

ビジネスエリートのための 教養としての日本の神様

『ビジネスエリートのための 教養としての日本の神様』

著者
深結(みゅう) [著]/西岡 和彦 [監修]
出版社
あさ出版
ジャンル
社会科学/経営
ISBN
9784866674087
発売日
2024/12/17
価格
1,980円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

【毎日書評】ビジネスシーンで役立つ日本の「神様」についてのノウハウとは?

[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)

ビジネスエリートのための 教養としての日本の神様』(深結(みゅう) 著、 西岡 和彦 監修、あさ出版)の著者は「ヒーリングシンガー」。聞き慣れない名称ですが、日本各地の神社仏閣、インドの世界遺産で開かれる仏舎利御開帳フェスティバルなど、世界各地の聖地で歌を歌っているのだそうです。

また、島根県親善大使、出雲観光大使としても活動しているのだとか。いずれにしてもそうした活動を通じ、神社の由来やお参りの仕方などさまざまなことを学んでこられたということ。そして神社への参拝や、学んだことを伝える活動をするなかで、経営者やビジネスエリートの方々と知り合う機会が増えたそう。そのことについて注目すべきは、以下の指摘です。

彼らは日本の神様や神道、神社について学び、日常の中に取り入れることで、自身の可能性を広げ、人生を豊かにしていました。

驚くことに、ビジネスシーンでも日本の神様や神道などに関する知識が役立っているといいます。仕事で神様に関する行事があるからだけでなく、仕事の仕方、考え方、商談、会食など、実に様々なシーンで活用しているとのことでした。(「はじめに」より)

最近では、海外のビジネスエリートが日本の神様や神道に興味を抱き、学ばれることも増えてきているのだといいます。つまりビジネスパーソンにとって、日本の神様や神道、神社に関する知識はいまや“教養としてたしなむもの”になりつつあるというのです。

そこで本書において著者は、多岐にわたる日本の神々や神道、神社に関する知識を“ビジネスパーソンとして押さえておきたい”という視点に基づいて体系的にまとめているわけです。日本の神々の現在、神道の歴史、神様や神話の紹介にはじまり、神社での振る舞い方など具体的なトピックス満載。きょうはそのなかから、第1章「ビジネスパーソンなら知っておきたい日本の神様のこと」に焦点を当ててみたいと思います。

偉大な経営者や成功者は神様を大切にしている

偉大な経営者たちの多くは、神社への参拝を欠かせないのだそうです。シリアスなビジネスの世界では、ときには未知の領域に踏み込まなくてはいけないこともあるもの、そこで、人知を超えた神様の力を信じる人が多いということのようです。

株式会社プラネットが行った「お寺・神社に関する意識調査」では、会社役員・経営者や会社員、自営業者、公務員など様々な職業の3792人に「お寺と神社のどちらによく行きますか」と尋ねています。

そのうち会社役員・経営者の45.8%が「両方とも行く」、21.7%が「神社」と回答しています。また、職業別では最も多い合計67.5%が神社に行っているという回答でした。寺だけに行っている人も合わせると80%に達し、会社役員・経営者ほど神仏を大切にしていることがわかります。(16ページより)

古来、日本人のなかに脈々と受け継がれてきた神様への心を、経営者のように上に立つ人ほど強く意識しているということなのでしょう。そしてその思いを従業員へと広げ、そこで成功した人たちがやがて経営者となり、先人にならって神様からいただいたご縁に感謝する。さらには、それを若い世代へと伝えていく。

こうして神様を大切にする心が色濃く受け継がれた人ほど、偉大な経営者となり、成功者となっていくということ。著者もそうしたさまを数多く見てきたといいます。(16ページより)

海外からも注目が集まっている八百万(やおよろず)の神様

お参りに行った神社で外国人の姿を目にするのは、いまや珍しいことではなくなりました。神社は境内に巨木も多く、広大な鎮守の森や御神体としての自然豊かな山もあるので、外国人にとっても日本の文化や自然に触れることのできる場所として人気があるのでしょう。

伊勢志摩サミットで伊勢神宮を訪れた米国のバラク・オバマ大統領(当時)は、「幾世にもわたり、癒しと安寧をもたらしてきた神聖なこの地を訪れることができ、非常に光栄に思います。世界中の人々が平和に、理解しあって共生できるようお祈りいたします」と記帳しています。(26ページより)

一方、日本国内の神社で奉仕する外国人の神職も誕生しているようです。神道に創始者はおらず、教義も聖典もなく、改宗や入信の仕組みもありません。大切なのは、自然への畏敬の念や歴史・文化への敬愛の心。

そんな、神社での祭祀だけでなく生活習慣の中に無意識のうちに現れる日本人の信仰のかたちは、宗教というよりも哲学のように感じられるのかもしれません。

約50ヵ国以上を訪ねて他の宗教の聖職者らと交流し、神道についての研究書など20冊以上の著書がある加藤隆久・生田神社名誉宮司は「神道のようにすべてのものに神、魂が宿ると考えるアニミズムの要素を持つ宗教は、一神教へ至る前段階にあるという意味で“下等”な位置づけをされる時代もありました。

しかし、例えば地球温暖化問題などで自然との関わり方が根本から考え直されるようになり、すべてのものを敬い、調和を尊ぶ神道のような心のあり方が見直されてきているように感じます」と話してくれました。(27ページより)

日本人が思っている以上に、外国の人々は日本の神様、神道について学び、人生の指針としているようです。(23ページより)

ビジネスシーンにも神社や神様の存在が求められてきた

企業を訪ねると、事務所に神棚や御礼が飾られていることがあります。

神棚に神様をお祀りすると、その空間が清められ、邪気が祓われます。神棚を置くということは、そこで働いている人たちを大切にするということです。

毎日、お水をかえ、お供えをしてお参りすることで、気持ちを新たに一日の仕事に励むことができます。教義や聖典がなくても「神様が見ている」という心で自らを律してきた日本人にとって、神棚があるだけで身が引き締まる思いがするのではないでしょうか。(28〜29ページより)

また、敷地内に独自の神社を設ける企業も少なくありません。ビジネスの成功を神様に願うだけでなく、経営者や従業員が新年などに一緒にお参りをして商売繁盛や安全を祈願し、祭りなども定期的に行う――。

つまり共通の体験を通して心をひとつにし、力を合わせながら業務に励もうという、共同体としての企業の精神的な支柱になってきたということです。日本的経営のあり方はだいぶ変わってきたものの、神社を中心にまとまろうという考え方は、やはり日本らしいといえるでしょう。(28ページより)

日本の神様について学ぶことは、ビジネスに役立つだけでなく、実りある人生を送るきっかけにもなると著者はいいます。信仰心のあり方や宗派、政治的価値観に関係なく知識を蓄えておくことは、たしかに有効なのかもしれません。

Source: あさ出版

メディアジーン lifehacker
2025年1月6日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

メディアジーン

  • シェア
  • ポスト
  • ブックマーク