「福家警部補」シリーズ著者が描く“怪獣謎解きミステリ” 意外性が楽しい「怪獣殺人捜査」第2弾

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怪獣殺人捜査 高高度の死神

『怪獣殺人捜査 高高度の死神』

著者
大倉崇裕 [著]/田中寛崇 [イラスト]
出版社
二見書房
ジャンル
文学/日本文学、小説・物語
ISBN
9784576241258
発売日
2024/12/19
価格
1,980円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

怪獣特撮ファンも謎解きミステリファンも大満足の〈怪獣殺人捜査〉シリーズ第二作

[レビュアー] 若林踏(書評家)

 怪獣たちのいるところで謎解きを。大倉崇裕『高高度の死神』は、巨大怪獣が跋扈する世界での謎解きを描いた〈怪獣殺人捜査〉シリーズの第二作である。本作の主人公、岩戸正美は怪獣省の予報班に所属する人物で、怪獣出現の予測や出現した際の索敵などを担当する。予報官として怪獣災害の現場に赴く岩戸はそこで不可解な殺人事件に遭遇する事が多く、怪獣の脅威とともに殺人の謎解きにも取り組まねばならない姿が各話で描かれていく。

〈ゴジラ〉シリーズや〈ウルトラ〉シリーズを彷彿とさせる正攻法の怪獣スリラーに、正統的な犯人当ての興趣を組み合わせた点が本シリーズの特徴だ。岩戸以外にも警察庁特別捜査室の船村秀治という、一見冴えないが凄腕の刑事が探偵役として登場するなど、本格謎解きミステリの様式美も備えた作品になっている。

 第一話「三三〇〇〇フィートの死神」で登場する怪獣はクロウウィンガーと呼ばれる巨大な飛行怪獣で、アメリカ政府の要人を乗せた旅客機の目前にクロウウィンガーが姿を現す。機内では衆人環視下での毒殺事件が発生し、乗り合わせた岩戸は大空の密室で怪獣退治と犯人捜しの双方に挑まなければいけない。閉鎖空間での推理という謎解きミステリではお馴染みのシチュエーションを、怪獣パニックものの展開と掛け合わせて書いているところが秀逸である。

 怪獣ものだからこそ書ける謎も用意されている。第二話「赤か青か」では二体の怪獣のうち、どちらが核爆弾を飲み込んでいるのかを特定しなければいけない状況に岩戸と船村は陥るのだ。第三話「死刑囚とモヒカン」は放火殺人事件で捕まった人間の無実の罪を晴らすために怪獣の関与を証明しようとする。リーガル小説の定型の一つである冤罪ものに、怪獣を絡ませるという意外性が楽しい。怪獣特撮ファンも、謎解きミステリファンも双方満足できる物語が詰め込まれた一冊だ。

新潮社 週刊新潮
2024年1月16日号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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