「ユーミン」の歌声が心を揺さぶるのには「2つの理由」があった! プロの音楽家が語る歌い手たちのボーカル論

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ユーミンの歌声はなぜ心を揺さぶるのか 語り継ぎたい最高の歌い手たち

『ユーミンの歌声はなぜ心を揺さぶるのか 語り継ぎたい最高の歌い手たち』

著者
武部 聡志 [著]/門間 雄介 [編集]
出版社
集英社
ジャンル
芸術・生活/音楽・舞踊
ISBN
9784087213409
発売日
2024/11/15
価格
1,155円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

70・80・90年代そして現代時代を超えるボーカル論

[レビュアー] 碓井広義(メディア文化評論家)

 まだ荒井由実だった松任谷由実(以下、ユーミン)の「ひこうき雲」を初めて聴いたのは、ラジオの深夜放送だった。1973年秋のことだ。かぐや姫やチューリップなどとも異なる新たな音楽の出現。しかも当時多くの若者たちを引きつけた彼女の歌は、半世紀が過ぎた今も色褪せていない。それはなぜなのか。

 武部聡志『ユーミンの歌声はなぜ心を揺さぶるのか』は、自身も音楽家で長年彼女のコンサートの音楽監督を務めてきた著者にしか語れないボーカル論だ。まず、ユーミンの歌唱の魅力は「ストーリーを伝える力」と「声の波動」だと明かす。

 書く詞には様々な角度から捉えたテーマが存在し、ストーリーテラーとして物語を紡いでいく。また声が持つ独特の波動は、ひと声発しただけで聴く者の世界を変えてしまうのだ。

 70年代のユーミンは、「やさしさに包まれたなら」や「中央フリーウェイ」などを、あまり情緒的にならずに感情を抑えて歌っている。ビブラートをなるべくかけずにまっすぐに歌い、歌にアンニュイ感や微かな暗さを漂わせた。

 そして80年代にはポジティブな恋愛観を提示しながら消費文化の時代を牽引。90年代に入ると「人生や魂みたいなもの」を曲の中に込めるようになったと著者は言う。その後も、時代性を超えて自身の表現したい世界を作り続けている。

 他に吉田拓郎や井上陽水など時代を変えた歌い手たちが登場する本書は、音楽が聴こえる同時代史だ。

新潮社 週刊新潮
2024年1月16日号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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